11月の米大統領選に向けた第1回テレビ討論会が6月27日夜(日本時間28日午前)、ジョージア州アトランタのCNNスタジオで開かれた。再選を狙う民主党のバイデン大統領(81)と返り咲きを目指す共和党のトランプ前大統領(78)による討論会は、2020年大統領選と同じ対決の構図となった。90分間に設定された討論では、経済・インフレ、人工妊娠中絶、移民政策と国境問題、ウクライナ情勢と中東問題など多岐にわたり、双方の激しい主張で火花を散らした。トランプ氏とバイデン氏の両陣営が合意したルールによると、CNN記者2人が司会を担当。討論会では、CM放送のため2度の中断があるが、この時間に陣営のスタッフが両候補に接触することはできない。スタジオ内は無観客で、両者は同一の演壇に立ち、位置はコイントスによって決めた。マイクは討論会の間、順番が回ってきた候補者以外は消音された。CNNによると、大統領選討論会の視聴者は推定で5127万人にのぼり、2020年の第1回討論会と比較して30%減となり、両候補者に対する有権者の関心の低さが際立った。
CNNが有権者565人を対象に実施した世論調査によると、トランプ氏のパフォーマンスがより優れていたと回答したのは67%で、バイデン氏のパフォーマンスがより優れていたとした33%を上回った。指導力に関しては、トランプ氏に大いに信頼が持てると回答したのは36%だったのに対し、バイデン氏への評価は14%だった。討論会でバイデン氏は声がかすれ、質問の回答で発言できないなど痛ましい場面も確認された。米有力紙ニューヨーク・タイムズは28日の社説で、1回目の大統領選討論会を受け、バイデン大統領に対して、選挙戦からの撤退を求めた。同紙は、「27日夜の大統領に、偉大な公僕だった頃の面影はなかった。2期目に何を達成するつもりなのかうまく説明できず、トランプ氏の挑発に対して反応に苦慮した」と記したうえで、「今のバイデン氏にできる最高の公共の奉仕は、再選に向けた選挙戦を継続しない意向を表明することだ」と指摘した。
米メディアからはバイデン氏の健康状態を不安視する厳しい論調が目立った。保守系メディアでは、米フォックス・ニュースは、「共和党がバイデン氏を大統領失格」、日刊紙ニューヨーク・ポストは、「我々は、ジョー・バイデン氏の大統領職の終わりを目撃した」と酷評。一方、リベラル系では、CNNが「バイデン氏、討論会の惨敗で再選の危機に陥る」と伝え、ニューヨーク・タイムズは、「ぶざまなパフォーマンスとパニックに陥る民主党」と論評した。バイデン氏は討論会翌日の28日、「自分がもう若くないことは分かっている。以前のように楽に歩くことはできないし、滑らかに話すこともできない。以前ほど討論もうまくないが、自分が今何をしているのかは分かっている」と述べたうえで、「私は真実を語るすべを知っている、善悪を見極める方法も分かっている。大統領職を遂行する方法、物事をやり遂げる方法も分かっている」と再選意欲を強調した。
トランプ氏は同日、「バイデンが90分間の討論会に耐えられるかどうかではなく、いんちきバイデンがホワイトハウスに居座ることにアメリカがあと4年間耐えられるかどうかだ」と討論会を振り返った。CNN上級政治評論家のアクセルロッド氏は、「バイデン氏は少し混乱しているように見えた。討論が進むにつれて力強くなっていた。だが、そのころには、(民主党は)パニックに陥っていたと思う」と語った。大統領選挙からの撤退表明はないが、バイデン氏に対する米メディアの論調は厳しく、候補差し替えの圧力が強まっている。カマラ・ハリス副大統領をはじめ、カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事、ミシガン州のグレッチェン・ホイットマー知事、また、元ファーストレディーのミシェル・オバマ氏が「ポスト・バイデン」の可能性が取り沙汰されている。
★ゲスト:前嶋和弘(上智大学教授)、中林美恵子(早稲田大学教授)
★アンカー:末延吉正(ジャーナリスト/元テレビ朝日政治部長)
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