11月の米大統領選に向けた27日の第1回テレビ討論会で、民主党のジョー・バイデン大統領(81)の高齢不安に拍車がかかり、党内からは候補の「差し替え論」も浮上している。しかし、党候補指名レースで勝利した候補を交代することは可能なのか。
「我々はよくやったと思う。ウソつき(トランプ前大統領)と討論するのは大変だ」。バイデン氏は27日の討論会後、記者団にこう語った。大統領選からの撤退を求める意見について問われると「ノー」と否定した。ただ、党内では討論会での低調なパフォーマンスを受けて、候補交代を求める声も出ている。
候補を差し替えるための条件は
候補を差し替えるには、バイデン氏自身が断念することが大前提になる。6月までに行われた各州の予備選・党員集会の大半でバイデン氏は勝利。8月19~22日の党全国大会で大統領候補選出の投票権を持つ「代議員」は、自分の意思ではなく、予備選の結果に基づいて投票することになっており、バイデン氏は代議員3937人のうち3894人の票を獲得した。
米メディア「ポリティコ」は27日、「党のルールでは、代議員は候補への投票を誓約しているだけで、義務にはなっていない」と指摘し、実際は別の候補に投票することも可能だとの解釈を示した。
しかし、バイデン氏の陣営は代議員の選定にも関与しているため、党大会本番で多数の代議員が「裏切る」ことは考えにくい。民主党は党大会前にオンラインで候補指名のプロセスを済ませる案も検討しているが、この場合でも同様だ。
一方、バイデン氏が正式に指名される前に出馬を断念すれば、3894人の代議員の投票先は宙に浮く。党の判断で予備選や党員集会をやり直す可能性もあるが、費用や時間の制約があって難しい。そのため、全国大会に集まった代議員が「自由投票」で候補を決めるシナリオが有力になる。
新たな候補立てても、高いハードル
米メディアによると、全国大会で新たな候補が名乗りを上げるには、民主党では300人以上の代議員からの支持が必要で、州をまたいで一定の支持が得られる有力政治家でないと立候補は難しい。党候補指名には過半数の代議員の支持が必要で、候補が乱立すれば、票がばらけて候補がなかなか決まらない可能性もある。
一方、バイデン氏が8月の党大会で一度指名された後に出馬を断念した場合、民主党全国委員長が連邦議会の党指導部や州知事らと協議して、新たな候補を選ぶことになる。計483人の党全国委員の過半数が支持すれば党候補になるが、手続きを巡って党内の駆け引きが激化するのは必至だ。
バイデン氏が身を引いた場合、カマラ・ハリス副大統領(59)が後継と目されるが、世論や党内の支持はバイデン氏よりも低く、すんなり決まりそうにない。
「ポスト・バイデン」に意欲を見せてきた西部カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事(56)、中西部ミシガン州のグレッチェン・ウィットマー知事(52)、ピート・ブティジェッジ運輸長官(42)らが次々と名乗りを上げる可能性がある。【ケノーシャ(中西部ウィスコンシン州)秋山信一】
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