欧州連合(EU)は27日、ロシアの侵攻を受けるウクライナと安全保障協定を締結した。ウクライナのゼレンスキー大統領がEU本部を訪れ署名した。EUはウクライナに兵器や軍事訓練、資金などの提供を継続することを確約し、ウクライナが攻撃を受けた際に支援を緊急協議する体制を作る。ウクライナはEU加盟に向け、法の支配などを強化する。
協定はEUからの長期的な軍事装備の提供のほか、防衛産業間の協力拡大、サイバー攻撃対策での協力強化、地雷除去の支援など9分野にわたる。今後、ウクライナが新たに攻撃を受けた場合などに、EUはウクライナ政府と24時間以内に協議し、必要な支援を決める。相互防衛義務などはないものの、関係強化でウクライナの防衛力を高め、ロシアの侵攻を抑止する狙いもある。
米国では議会の混乱で総額608億ドル(約9兆7700億円)のウクライナ支援が滞り、戦況悪化につながった。また11月の米大統領選でウクライナへの支援に消極的なトランプ前大統領が当選した場合、米国の支援が減少する可能性がある。こうした状況から支援の持続性強化に重点を置いた。
EU加盟国はこれまでウクライナと2国間で軍事支援などの協定を結んでいる。EUも500億ユーロ(約8兆6000億円)のウクライナ支援や、ロシア中央銀行の凍結資産運用益を支援に活用することも決めた。今回の協定でそれらを補完し、支援が滞らないようにする。
ウクライナは人権に関する改革や犯罪捜査の強化など、EU加盟に向けた取り組みを加速させる。ゼレンスキー氏は「私たちがこの困難な時代に結束し続け、世界により強い欧州を見せることができたことに感謝したい」と述べた。【ブリュッセル宮川裕章】
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