24日午前10時半ごろ、韓国・ソウル近郊、華城(ファソン)市の工業地帯で火災が発生しました。

現場に到着した消防がその様子を撮影していました。細かい爆発音が続き、閃光も確認できます。

爆発の元と見られるのが、乾電池です。

火災が起きたのは、電池を製造するアリセル社の工場で、当時、リチウム乾電池3万5000個が保管されていたといいます。

リチウム電池は寒さなどの環境にも強く、長期間使えるため、防犯カメラなどの屋外で使う機器にも使われています。また、地元メディアによりますと、今回、火災があった工場は、軍が使う無線機用の電池を作っていたといいます。

地元消防:「正確な原因は、調査をしないとわかりませんが、リチウム電池の完成品を検収し、包装作業をしている最中に電池から爆発が起きたという目撃者の証言がありました」

なぜ発火したのかはわかっていませんが、出火元はリチウム電池とみられています。そして、被害を拡大させた要因になったのもリチウム電池に含まれている“リチウム”です。

横浜国立大学総合学術高等研究院・三宅淳巳上席特別教授:「金属のリチウムを使うところだと、特に水と接触すると、一般的には水素を発生して、発熱を起こす非常に危険な物質」

リチウムは、水と激しく反応するため、消火するには砂などで、物理的に酸素を遮断することが一般的だといいます。ただ、今回のように大規模な火災になった場合、それを覆うだけの大量の砂などを用意するのは現実的ではありません。実際は、リチウムが燃え尽きるのを待つしかないそうです。

横浜国立大学総合学術高等研究院・三宅淳巳上席特別教授「消火方法については、まだ決定的なものはなく研究段階。消火は容易ではない」

今回の火災でも、10時半ごろ出火したとみられる火災は、50台以上の消防車が出動したにもかかわらず、鎮圧状態になるまで5時間近くを要しています。

消防は、初期消火について「初期に急激に燃焼したにもかかわらず、水で鎮圧できないので苦労している。乾いた砂など準備しているが、建物の内部に入れる状況にはない」と説明しています。また、火災が起きた建物にいた67人中、22人の死亡を確認したとしています。そのうち、20人が外国人で、18人は中国籍でした。遺体は、すべて2階で見つかっています。

韓国は、世界最低ともされる出生率のなか、労働力確保のため、外国人労働者の受け入れを段階的に拡大しています。その象徴の1つが、火災が起きた華城市です。

工場が立ち並ぶ華城市は、いまでは“外国人労働者の都市”と呼ばれるほど、積極的に受け入れを行っていました。

現場を視察した尹(ユン)大統領は、「化学物質などを扱う工場は、避難経路の確保など、より安全を徹底しなければならない」として、再発防止を関係部署に指示しました。

◆日本にも、リチウムを扱う工場はありますが、どのような対策を行っているのでしょうか。日本火災学会会長で、秋田県立大学教授の鶴田俊さんに聞きました。

鶴田さんは「火災のリスクがあるリチウムは、各工場で所有できる量が法令で決まっている。また、実際に置いてある量も各消防署が把握し、火災の対応も事業者と消防署が打ち合わせしている。水や酸素に触れると発火しやすいため、保管も部屋に細かく間切りを入れ、消火しやすいように防火対策を徹底している。過去に日本でも小規模な火災は起きている。リスクの高い物質なので、扱いに注意が必要だ」と話します。

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