英国を訪問している天皇、皇后両陛下はチャールズ国王夫妻が主催する晩さん会に出席するなど、王室のメンバーと友好関係を深められる予定だ。皇室と深いつながりがある英国の王室にはどのような歴史があり、国民にとってどんな存在なのか。
英国の王室は長い伝統を持ち、起源は約1000年前にさかのぼる。フランス・ノルマンディー地方を支配していたウィリアムが1066年、グレートブリテン島に上陸し、イングランドを征服して「ノルマン朝」を創始した。これが以後の王制の基礎となる。
王制は中断した時期もあった。17世紀のピューリタン(清教徒)革命では国王が処刑され、1649~60年は共和制だったが、その後は王制に戻った。
現在の王室の祖先はドイツ系。1714年、それまでの王朝が途絶え、血縁関係にあったドイツのハノーバー家から新君主を迎えた。その後もドイツ系の王朝名が続いたが、第一次大戦中に敵国風の名前を嫌い、宮殿の名を取ってウィンザー朝に改称した。現国王のチャールズ3世はウィンザー朝第5代国王だ。
「君臨すれども統治せず」を原則とする英王室は政治に介入せず、儀式への出席や外国の公式訪問などが主な公務となる。ただ、チャールズ国王は皇太子時代、中国の弾圧を受けるチベットに関心を寄せ、チベット仏教指導者ダライ・ラマ14世と度々面会して中国政府を怒らせたこともあった。
近年は王室の人気も下降気味だ。国民が生活費高騰に苦しむ中、王室の警備に過剰な公金が支出されているとの批判も起きている。2020年に米国で始まった「ブラック・ライブズ・マター」(BLM、黒人の命は大事だ)運動の影響もあり、王室が過去に関与した植民地支配や奴隷貿易に対する厳しい見方もある。
英調査会社ユーガブの世論調査によると、君主制支持者は12年7月には75%だったが、23年8月には62%と10ポイント以上も下落した。質問の方法によっては君主制支持が5割を切る場合もあり、若者を中心に共和制への移行を望む声もある。
個性の強い王室メンバーは、娯楽産業のコンテンツとしての人気も根強い。近年では米動画配信大手ネットフリックスが、故エリザベス女王の人生を描いたドラマ「ザ・クラウン」や、ヘンリー王子とメーガン妃のドキュメンタリー「ハリー&メーガン」といったヒット作を次々に生み出している。
国王とキャサリン皇太子妃は2~3月、相次いで「がんを患っている」と公表した。王室は2人とも「経過は順調」としているが、がんの種類や進行度は発表していない。国王は「前立腺がんではない」ことまでは判明しており、現在は外来で治療を続けている。キャサリン妃は化学療法を受けているという。【ロンドン篠田航一】
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