北朝鮮の平壌を訪問したロシアのプーチン大統領(中央右)と談笑しながら歩く金正恩朝鮮労働党総書記(左)=2024年6月19日配信、朝鮮中央通信・ロイター

 ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記が軍事面を含む協力強化を打ち出すことに、米韓両国は懸念を強めている。朝鮮半島を含む東アジア情勢を不安定化させかねないためだ。砲弾や銃弾の提供といった北朝鮮の対露支援はウクライナでの戦争継続能力を下支えするほか、北朝鮮は自らの攻撃能力や偵察能力を高める先端技術の提供をロシアに求めているとみられる。

 韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)政権は、ロシアが北朝鮮との武器取引で安保理決議違反を繰り返していると非難する。米韓両国が特に神経をとがらせるのは、ロシアが軍事偵察衛星の開発で北朝鮮に技術支援をしているとみられることだ。韓国統一省当局者は18日、プーチン氏の訪朝団にロシアの宇宙開発公社ロスコスモスの社長らが参加していることを挙げ「前回のプーチン氏訪朝の時に比べ、宇宙など幅広い分野の参加者が目立っている。注視する必要がある」と述べた。

 北朝鮮は5月末に新型エンジンを使った軍事偵察衛星の打ち上げに失敗したが、新型エンジンの開発にはロシア技術者が協力したと報じられている。また、北朝鮮は開発を目指す原子力潜水艦や、迎撃を避けるミサイル関連技術などについてもロシアの技術協力を期待しているとされる。

 米国防総省のライダー報道官は18日の記者会見で「(露朝)両国の協力関係の強化は、とりわけ朝鮮半島の平和と安定の維持に関心がある人々にとって懸念すべきことだ」と述べた。また韓国の趙兌烈(チョテヨル)外相は17日、韓国メディアのインタビューで「朝鮮半島の平和と安定を脅かす方向で議論がなされてはならない」との警告をロシア側にしたと明らかにし、「(会談の)結果によっては必要な対応措置をとる」とけん制した。

 また、北朝鮮はこれまでに500万発の砲弾をロシアに提供したとされており、ライダー氏は「北朝鮮がロシアに弾薬や武器を提供し、ウクライナに対する戦争の継続を助けていることは知られている。情勢を注視していく」と述べ、北朝鮮によるロシアへの軍事支援についても強い懸念を示した。【ワシントン松井聡、ソウル福岡静哉】

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