孫文ゆかりの「黄埔軍官学校」設立100年を記念する式典に出席した台湾の頼清徳総統=台湾南部・高雄で16日、ロイター

 20世紀初頭に中国の国民革命を推進した孫文が設立した軍幹部養成校「黄埔(こうほ)軍官学校」開校から100年を迎えた16日、同校の流れをくむ台湾南部・高雄の陸軍軍官学校で記念式典が行われ、頼清徳総統が演説した。頼氏は、強大化した中国が併合を狙っているという最大の挑戦に直面していると強調。軍人として「国軍の信念を堅持し、国家主権を守って侵略を許さないよう望む」と呼びかけた。

 1924年6月に中国南部・広州市で開校した黄埔軍官学校は、その後台湾に逃れた国民党と中国共産党それぞれの軍隊がルーツの一つに位置付ける国共合作の「シンボル」で、5月に就任した頼氏の発言ぶりに注目が集まっていた。

孫文ゆかりの「黄埔軍官学校」設立100年を記念する式典に出席した台湾の頼清徳総統=台湾南部・高雄で16日、総統府提供

 この日の演説は「中華民国と中華人民共和国は互いに隷属しない」と中国との違いを強調した5月20日の総統就任演説にトーンを合わせ、頼氏はさらに台湾の民衆のために戦うのが真の軍人であり、この志がないのは「偽物の黄埔だ」と主張した。

 開校当時の黄埔軍官学校は軍組織の中核となる人材教育を目指し、校長には国民党の蔣介石が選ばれ共産党からは周恩来が政治部主任に就いた。国共内戦で敗れた国民党が台湾に逃れると、50年に現在の場所に軍官学校として再建された。中国側も学校跡地を整備し、共産党が革命を受け継いだと主張している。

 中国も各地で設立100周年の記念行事を行っている。中国で台湾政策を主管する国務院(政府)台湾事務弁公室の陳斌華(ちんひんか)報道官は12日の記者会見で「黄埔軍官学校は両岸(中台)同胞の共通する歴史的財産だ。民進党当局がいかに苦心して脱『中国化』しようとしても、両岸同胞の中国に対する心は引き裂けない」と批判した。【台北・林哲平】

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