米連邦最高裁=2024年2月14日、秋山信一撮影

 米連邦最高裁は13日、米食品医薬品局(FDA)が人工妊娠中絶に使う飲み薬の処方基準を緩和したことを容認する判断を示した。中絶反対派の医師や団体は「安全性の考慮が十分ではなく違法だ」と訴えていたが、最高裁は「原告には基準緩和による損害が認められず、原告として不適格だ」と指摘。遠隔診療による処方も含めて、従来通りに中絶薬を使用することを認めた。

 13日の判断は、9人の判事全員の一致意見だった。判決によると、FDAは2000年、経口中絶薬「ミフェプリストン」の使用を認可。16年に処方までに必要な対面診療の回数を3回から1回に減らし、21年には遠隔診療による処方も認めた。

 原告らは22年11月に認可取り消しなどを求めて提訴し、1審の連邦地裁は23年4月にFDAの認可を取り消す判断を示した。2審は認可は有効だとしたが、16年と21年の基準緩和は違法だと判断していた。

 係争中もミフェプリストンの使用は認められていた。ただ、連邦最高裁は22年6月に、1973年の憲法判断を覆して州による中絶禁止を容認した経緯があり、中絶容認派は「中絶を選ぶ権利がさらに制約されかねない」と懸念していた。

 中絶問題は11月の大統領選でも争点の一つになっている。22年の最高裁判決以降、世論調査や住民投票では中絶容認派が優勢で、中絶の権利擁護を掲げる民主党のバイデン大統領にとっては有利な論点となっている。共和党のトランプ前大統領は「各州の判断に委ねるべきだ」との立場だ。【ワシントン秋山信一】

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