スマートフォンに映し出されたオープンAIのロゴ=AP

 米オープンAIで、自社の人工知能(AI)を使った外国勢力による工作活動などの調査にあたるインテリジェンス調査チームのベン・ニモ主席調査員が12日、毎日新聞など一部日本メディアのインタビューに応じた。同社が特定した影響工作には日本を標的にした事例もあり、現時点ではAIは文章の生成に使われているケースが主流だと説明した。

 オープンAIは、対話型AIのチャットGPTなどを開発。5月30日に発表した調査報告書で、ロシア、中国、イスラエルなどに拠点を置く五つのグループが自社のAIを使った影響工作に関与したとしてアカウントを削除したと明らかにした。このなかで、中国の法執行機関との関連が指摘されるネットワーク「スパモフラージュ」が、東京電力福島第1原発の処理水の海洋放出を批判する日本語の文章をオープンAIの技術で生成し、大手ブログサイトなどで投稿していたと指摘した。

 ニモ氏は影響工作について「実行者の身元や意図を明かすことなく、世論を操作したり、政治に影響を与えたりする試み」と定義する。偽情報や誤情報をただ流す行為とは違い「事実に基づかない主張」を広げることが特徴だとし、「作成したコンテンツだけでなく、背後にいる実行者やその行動様式を調べることが大切になる」と指摘する。

 今回の調査では、「スパモフラージュ」以外の発信元から日本を標的にした影響工作は確認できなかったという。また、11月の米大統領選を標的にした事例も見つかっていない。影響工作と認められたケースでは、大部分がソーシャルメディアやブログなどに投稿するため、文章の作成や翻訳にAIが使われていた。生成画像を悪用した事例はほとんどなかったとした。

 一方、ニモ氏は「世論を操作しようと試みることと、実際に世論を操作することは区別したい」と述べ、今回の調査では大きな影響力を得た事例はなかったと強調。工作を防御する側にもAIが活用できるとし、「以前は調査に何時間も何日もかかっていた作業が、独自のAIツールを使えばほんの数分でできるようになる」と述べた。

 ニモ氏は米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」のデジタル・フォレンジック研究所の共同設立者で、米メタでも内外の発信元による組織的不正行為などの調査を担った。【ニューヨーク八田浩輔】

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