パレスチナ自治区ガザ地区南部ラファから避難する人たち=7日、ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、国連安全保障理事会が10日、停戦案の受け入れを求める決議案を採択した。ただイスラム組織ハマスとイスラエルの相互不信には根深いものがあり、停戦に向けた具体的な交渉に進むかが焦点となる。

 ハマスは一貫して「恒久的な停戦」を求めてきた。バイデン米大統領が5月末に発表した新たな停戦案は、第1段階の休戦中に人質の一部を解放した後、第2段階で「恒久的な敵対関係の解消」を実現するとしており、内容的にはハマスの要求に近い。

 ただ、ハマスはイスラエルの「合意破り」を警戒して交渉には慎重で、停戦した場合の実効性を担保するよう要求。これに対してブリンケン米国務長官は10日、訪問先のエジプトで「ハマスが承諾するよう圧力をかけてほしい」と中東諸国に呼びかけた。今回、米国の和平案が安保理で追認されたのはハマスにとっても追い風で、受け入れを決めて交渉の席に着くかが注目される。

 一方、イスラエル側も交渉に臨む姿勢はあいまいだ。

 ネタニヤフ政権内でも、極右閣僚から停戦案に批判的な声が上がっていた。さらに9日には「穏健派」とされるガンツ前国防相が戦後統治を巡りネタニヤフ首相と対立し、戦時内閣からの離脱を表明した。

 今回の停戦案はイスラエルの戦時内閣が承認しており、バイデン氏も「イスラエルの提案」だとして発表したが、ネタニヤフ氏はその後も「ハマス壊滅」を繰り返し強調。交渉に応じるとしつつも、ガザ地区での軍事作戦を激化させている。

 ただイスラエルとしても後ろ盾の米国が提案した今回の安保理決議は軽視できず、一定の外交的圧力になる。またイスラエル軍が8日にガザ地区で人質4人の奪還作戦を行った際、ガザ側では空爆などにより女性や子供を含む270人以上が死亡したとされ、イスラエルへの国際的な非難はさらに高まっている。

 ブリンケン氏は10日、イスラエルを訪問し、ネタニヤフ氏と停戦案について協議した。会談では、イスラエルが提案したとされる停戦案を支持することを強調。米国がイスラエルの安全保障に関与することも約束した。その上で、バイデン米政権が繰り返し求めているガザ地区での戦後統治の計画の重要性も訴えており、イスラエルがどこまで納得するかも焦点となる。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地】

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