欧州議会選の暫定結果を受け、発言するフォンデアライエン欧州委員長=ブリュッセルで9日、ロイター

 欧州連合(EU)の欧州議会選挙(定数720)は9日まで27加盟国で投票が行われた。議会事務局の10日午前11時半(日本時間午後6時半)現在の推計によると、改選前(705議席)より右派、極右のEUに批判的な2会派が伸長し、過去最多の議席を獲得した。EUの環境規制や移民流入への反発が躍進につながったとみられる。親EU勢力3会派では、マクロン仏大統領の与党が所属する中道派が大幅に議席を減らした。ただ、3会派の合計では過半数を確保した。

 EU懐疑派では、右派「欧州保守改革」(ECR)は69議席から73議席に、仏極右「国民連合」などが所属する「アイデンティティーと民主主義」(ID)は49議席から58議席に伸長した。

欧州議会選の投票締め切り後、演説する仏極右政党党首のルペン氏=パリで6月9日、ロイター

 親EU勢力では、最大会派の中道右派「欧州人民党」(EPP)が9議席増の185議席。第2勢力の中道左派「欧州社会民主進歩同盟」(S&D)は2議席減の137議席となった。マクロン氏の与党が所属する「欧州刷新」(RE)は23議席減の79議席となったが、3会派で計401議席となり、過半数を確保した。環境会派「欧州緑の党・自由連盟」は19議席減と退潮した。

 EU懐疑派が躍進した背景には、EUの政策への不満がある。選挙前、EUの環境規制の強化で農薬の使用が制限され、各国の農家が抗議デモを実施するなど、EUの政策がもたらす生活への悪影響に不満が募っていた。また増加する移民への対応に納得していない有権者が右派、極右に流れたとみられる。今後、環境政策や不法移民の管理に影響が出る可能性がある。

 ただ、EUの政策への影響は限定的との見方もある。EU懐疑派の右派ECRを実質的に率いるイタリアのメローニ首相は、EPPを率いるフォンデアライエン欧州委員長と移民対策などで協力してきた経緯もあり、多くの政策で主要3会派に協力するとみられる。

 欧州議会選は5年に1回実施され、有権者数は約3億7000万人。加盟27カ国に人口比率に応じた議席数が割り当てられ、有権者は自国の政党に投票し、比例代表制で当選議員が決まる。選挙後、政策の近い政党が国を超えて会派を構成する。【ブリュッセル宮川裕章、岡大介】

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