アメリカン航空の旅客機=2024年1月16日、AP

 米西部アリゾナ州フェニックスの空港で今年1月、出発準備をしていたアメリカン航空の旅客機の黒人男性客8人が「体臭に関する乗務員の苦情」を理由に搭乗ゲートへ戻される事案があり、人種差別だとの批判が高まっている。同航空スタッフは差別を認めて開き直るような発言もしたとされる。全米黒人地位向上協会(NAACP)は6月4日、再発防止策をとらない場合、黒人に対して同航空の利用を控えるよう呼びかけると警告した。

 この事案は、黒人男性客のうち3人が5月下旬、アメリカン航空に損害賠償を求め、連邦地裁に提訴したことで表面化した。訴状によると、1月5日、ニューヨークに向かう旅客機内で出発を待っていた際、離れて座っていた8人は相次いで降機するよう乗務員から求められた。

 機外に出た後に乗客が理由を聞くと「不快な体臭に関する苦情があった」と説明され、「差別ではないか」と抗議すると、スタッフは「そうだ、そうだ」と返答したという。搭乗ゲートでは「白人男性の乗務員から苦情が出た」と改めて説明があり、乗客の一人が「肌の色が理由で異なる扱いをするのか」と聞くと「そうだ。異論はない」と言われた。同航空から体臭に関する具体的な指摘はなく、乗客側は誰も「不快な体臭」を感じなかったという。

 結局、同日中にニューヨークに向かう別の便は確保できず、乗客8人は約1時間後に機内に戻された。その後に乗客向けに「体臭に関する懸念から、遅延した」とアナウンスがあったという。米メディアによると、アメリカン航空は提訴を受けて、「事案は現在調査中だ。差別の訴えは非常に真剣に受け止めている」とコメントした。

 NAACPは6月4日、アメリカン航空が「具体的な調査結果をいまだ示していない」と批判した。同航空では2017年にも黒人客への不当な扱いが発覚し、18年にDEI(多様性、公平性、包括性)に関する諮問機関を設置したのに、23年にはこれを解散したことも指摘。「諮問機関を再設置し、NAACPとの協議に応じるべきだ」と求めた。

 同航空は今回の要求について「NAACPとは偏見の問題に関して、教育や訓練で協力してきた」としているが、諮問機関の再設置に応じるかどうかは不明だ。【ワシントン秋山信一】

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