中国の董軍国防相は2日、シンガポールで開催されたアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で演説した。領有権を巡りフィリピンとの間で緊張が高まる南シナ海情勢について「中国は侵害や挑発に対して自制してきたが、限界がある」とフィリピン側に警告した。
南シナ海では中国海警局の艦船が比側の艦船に放水して負傷者が出るなど対立が激化している。マルコス比大統領は5月31日、同会合の基調講演後の質疑で自国側に死者が出た場合、「ルビコン川を渡ることになる(後戻りできない)」と相互防衛条約を結ぶ米国と共に軍事的対応に出る可能性を示唆していた。
董氏は演説でフィリピンを名指しすることは避けつつも「一部の国が外部勢力にそそのかされて、二国間の約束を破棄して、計画的に問題を引き起こした」と批判。米国が4月中旬、フィリピン北部に演習名目で中距離ミサイル発射装置を展開したことにも触れ「このようなやり方はいずれ自ら火の粉をかぶることになる」と反発した。
一方、台湾問題を巡っては、中国軍は台湾の頼清徳政権発足直後の5月23~24日、台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を実施し、周辺国から懸念の声が上がっている。
董氏は「(台湾の)民進党政権が『段階的な台湾独立』を企て、『脱中国化』を推し進め両岸の結びつきを断ち切ろうとしている」と批判したうえで、「台湾問題は完全に中国の内政であり、外部勢力に干渉する権利はない」と主張した。
米中関係については、「我々は米軍との交流・協力にオープンであり続けるが、これには双方の努力が必要だ」と指摘。米国が同盟国・友好国との連携強化を進めるインド太平洋戦略を踏まえ、「他国を標的にした『小さなサークル』は、地域の緊張を高めるだけだ」と改めて非難した。
演説後の質疑応答では、サイバー攻撃や核開発を続ける北朝鮮への支援を巡り「中国は言っていることと行動が違うのではないか」といった質問も出たが、董氏はこれらの質問にはほとんど答えず、台湾問題などに関する自国の主張を延々と述べ続けた。【北京・岡崎英遠】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。