イスラエルがパレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスに対して提案した停戦案を巡り、イスラエル首相府は1日、ハマスの撲滅などの条件が満たされる前に恒久的な停戦をするのは「成功する可能性がない計画だ」とする声明を出した。連立政権の一角を担い、ハマスの壊滅にこだわる極右政党に配慮したものとみられ、ネタニヤフ首相の政権運営が極右政党に依存している状況が改めて浮き彫りとなった。
一方、中道野党は停戦案を受け入れるなら「ネタニヤフ政権を支える」との姿勢を示している。
バイデン米大統領が5月31日に発表した停戦案は、3段階で構成される。第1段階で6週間にわたる休戦をし、一部の人質などを解放。第2段階で「恒久的な敵対関係の解消」などを実現し、第3段階でガザ地区の復興計画を実行するというものだ。
パレスチナに強硬的な極右政党「宗教シオニズム」の党首、スモトリッチ財務相は1日、ネタニヤフ氏が停戦案を受け入れれば、連立から離脱すると指摘。同じく極右政党「ユダヤの力」の党首、ベングビール国家治安相も「発表された停戦案はハマスの壊滅を諦めることを意味し、無謀な取引だ」と非難した。
ネタニヤフ氏が極右政党に配慮する背景には、国会(定数120)の議席の状況が関係している。連立与党は64議席なのに対して、野党は56議席で、差はわずか8議席しかない。二つの極右政党からなる政党連合は14議席持っており、仮に政権から離脱すると、過半数を失い、ネタニヤフ氏の政権運営は行き詰まる可能性がある。
一方、イスラエルメディアによると、24議席を持つ中道野党「イエシュアティド」の党首、ラピド前首相はネタニヤフ氏に対して政治的セーフティーネットを提供し、今回の停戦案で政権が崩壊しないようにすると述べた。
バイデン米大統領は31日の演説で、イスラエル側に「戦争を継続することを求める(極右の)人々がいることを知っている」と述べ、イスラエル側に交渉に真摯(しんし)に取り組むように求めていた。【エルサレム松岡大地】
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