米中国防相会談に臨むオースティン米国防長官(左から3人目)と中国の董軍国防相(右から2人目)=シンガポールで2024年5月31日、ロイター

 オースティン米国防長官と中国の董軍国防相は31日、シンガポールで会談した。米中国防相の対面での会談は2022年11月以来約1年半ぶり。台湾や南シナ海情勢を巡る議論では平行線をたどったものの、米中の偶発的衝突を回避するため両軍・国防当局間で意思疎通を継続していく方針を再確認した。

 米国防総省によると、オースティン氏は米中間の軍事的な意思疎通を維持することの重要性を強調。双方は、数カ月間以内に戦域司令官レベルの電話協議を再開することなどを再確認した。また、年内にも危機時の意思疎通に関する作業部会を招集するという。

 オースティン氏は台湾の頼清徳総統の就任式後に、中国が台湾を包囲する形で大規模な軍事演習を実施したことについては「挑発的な行動」として懸念を表明。「中国は台湾の政治的移行を強制措置の口実に利用すべきではない」と自制を呼びかけた。また領有権を巡り中国とフィリピンの間で緊張が高まる南シナ海情勢についても、「米国は国際法が許す限り、飛行・航行活動を続ける」と明言して中国側をけん制した。

 中国国防省は両氏が両国関係や台湾、南シナ海問題で意見を交わし、会談時間は予定より長い75分間だったと発表した。董氏も会談で「両軍関係が悪化を食い止め、安定している現状を大切にすべきだ」と対話の維持を歓迎する姿勢を示したという。

 一方、台湾問題について董氏は、「米国は『台湾独立』勢力に誤ったシグナルを送っている」と米国側の対応を批判。「米国は台湾と中国の問題に干渉すべきではない」と警告した。

 また会談では、ロシアによるウクライナ侵攻や北朝鮮情勢などについても意見を交わした模様だ。米中の国防当局間での対話を巡っては、23年11月の首脳会談で国防当局間などの対話再開で合意。両国防相は今年4月にもテレビ電話で協議し、軍同士の意思疎通を継続する重要性を確認していた。【北京・岡崎英遠】

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