慶応大の田中浩一郎教授

イスラエルの大使館空爆に比べるとイランの報復は抑制的だった。一方でイスラエルに対する抑止力を回復するという観点から見れば、イランの本気度を見せた点で目的を達成したといえる。

イランでは革命防衛隊の中でも報復のあり方への意見が分かれ、空爆から報復まで時間がかかった。ぎりぎりの現実的な対応だった。

明日以降、イスラエルがイランに報復攻撃を仕掛ける可能性が高い。本土が攻撃されればイランは確実に反撃する。報復の連鎖や事態のエスカレーションは避けられない。米英が軍事介入する可能性もゼロではないと考える。

核施設が標的にされた場合、イランに核拡散防止条約(NPT)から脱退する口実を与えてしまう。イランが核兵器開発に乗り出せばサウジアラビアも同様の道を歩む恐れがあり、緊張が高まるだろう。

仮にイスラエルがイランに報復しない場合、パレスチナ自治区ガザでの行動を米国に大目に見てもらえると勘違いし、攻撃を悪化させかねない。民間被害がさらに広がる恐れもある。

米国や先進7カ国(G7)のイスラエル擁護は過剰だ。イランは(自衛権を定めた)国連憲章に基づき、軍事施設のみ攻撃した。イランだけ非難し、ガザ攻撃を非難しないのは「法の秩序」を訴える側として説得力が揺らぐ。中国などに付け入る隙を与えかねず、日本にとっても困った事態なのは確かだ。(聞き手 桑村朋)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。