イスラエル軍が軍事作戦を進める中、避難するパレスチナの人たち=パレスチナ自治区ガザ地区最南部ラファで2024年5月28日、AP

 イスラエル軍は29日、パレスチナ自治区ガザ地区とエジプトとの間にある約14キロ、幅約100メートルの境界地帯全域を制圧したと発表した。イスラム組織ハマスの武器の密輸を防ぐのが狙いだが、境界地帯付近での情勢悪化を懸念するエジプトとの関係が悪化する可能性もある。

 イスラエルメディアによると、イスラエル軍は境界地帯沿いの大部分に部隊を配置した。これまでにハマスが武器の密輸などに使用していた、エジプト側につながる約20本のトンネルを発見したという。軍はハマスが今後、密輸は不可能だとの考えを示したが、すべてのトンネルを発見できているかどうかは不明だ。エジプト側はトンネルの存在について「真実ではない」と否定した。

 境界地帯は通称「フィラデルフィア回廊」と呼ばれる。ネタニヤフ首相が1月、ハマスの武器密輸を防ぐために、戦争終結前には封鎖する必要があると指摘。エジプトは境界付近の戦闘激化で国内にガザからの避難民が流入することを懸念しており、両国の緊張が高まる可能性がある。

 一方、国連のデュジャリック報道官は29日、イスラエル軍がラファ検問所の制圧を発表した今月7日以降、ガザへの人道支援の流入は67%減少したと明らかにした。また国連安全保障理事会は29日、ガザ情勢をめぐる公開会合を開き、イスラエルに対し、国際司法裁判所(ICJ)によるラファでの軍事作戦停止の暫定措置命令に従うよう求める声が相次いだ。非常任理事国のアルジェリアは、ラファでの軍事行動の即時停止を求める決議案を提案している。【エルサレム松岡大地、ニューヨーク八田浩輔】

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