自民党の原田義昭元環境相(奥原慎平撮影)

尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海外側にある接続水域で、中国海警局の船の航行が常態化している。14日まで115日連続して中国当局の船が確認された。自民党前衆院議員で環境相などを歴任した原田義昭弁護士が産経新聞に寄稿し、「一刻も早く当方の反撃を、実効あらしめるものに組み直さなければならない」と指摘。侵入する中国公船に放水砲の発射などで排除するよう求めた。

原田氏は衆院議員時代、中国政府機関が「尖閣群島」など日本側の呼称を使用して1969年に刊行した地図を国会で取り上げたり、尖閣諸島に公務員常駐を目指す勉強会を立ち上げたりした経緯がある。

議員職を離れて2年余りの今、中国海警局の尖閣領海への侵入、日本漁船への接近・付きまといなど、その不法な活動はもはや目に余る。国の主権が侵害され、国民の誇りが大きく損なわれていることに対する怒りを抑えることはできない。この焦りは私だけではあるまい。

中国の地図が日本領有を認める

2015(平成27)年2月23日の衆院予算委員会で、ある地図を広げて「この古地図は1969年、日本の国土地理院に当たる中国の『国家測絵総局』(当時)が編纂した地図で、尖閣諸島が『日本の領土』と明確に描いてある。中国政府自身が『日本領』と認めている何よりの証拠である」と発言した。中国は「その程度の資料なら100でも1000でも反証がある」(外交部)と強がりを言ったが、結局何も反論しなかった。

尖閣諸島の魚釣島=沖縄県石垣市(鈴木健児撮影)

地図は、外務省のあるOBが訪問持参したものである。同氏が中国の日本大使館在勤中に入手したもので、帰国後、公開すべきとあちこち相談したが、何処も「危険だから止めろ」と言って聞いてくれない。最後に私の所に持ってきたという。

主権国の義務=行政組織を整備せよ

自民党に「尖閣諸島への公務員常駐実現に向けた勉強会」がある。私が提案し、加藤勝信官房長官(当時)に設置を報告したものである。

尖閣諸島については日本に主権がある。当然に行政官署を置く権利に加え、国土として適切に管理する責務がある。然るに政府は行政上の管理を行っていない。居住や立ち入りを許していない以上、行政の関与は必要ないと思っているのか。某国を刺激せぬよう、自主的に控えているのか。日本は責任ある大国でありながら、尖閣諸島に対する行政上の管理(保全のための最も基礎的な責務)を怠っており、これは尖閣諸島に関する主張との整合性を欠く。森林管理、環境保護、海外線保全、治安維持活動など自治体と省庁が取り組むべきである。

近時の中国海警船の尖閣領海への不法な侵入は節度を超えている。海警船の大型化、武装化、公然たる日本の漁船追尾などを看過放置することは、国益を損なうのみならず、国民の主権意識と誇りを鈍化させ、日本という国家の姿勢に対して国際社会に疑念と蔑みをもたらす。その悪影響は目に見えないだけに深刻であることを、国家指導者は認識しなければならない。

海警船には放水砲を撃て

わが国はこの10年以上にわたり、中国の公船による領海侵入という主権への挑戦と辱めを公然と蒙っている。にかかわらず、やることは大使館を通じて文書か面談で抗議するだけ。こうした連日の領海侵入と抗議の繰り返しは、何ら緊張感のない日常茶飯事と化している。これぞ中国の古代からの戦争技術で、「サラミ戦術」による既成事実を常態化し、いつしか他国を侵奪するというやり方である。

中国海警局の船(中央)を挟み込むように航行し、調査船への接近を防ぐ海上保安庁の巡視船

日本の微温的抗議の一切は無視されており、一刻も早く当方の反撃を実効あらしめるものに組み直さなければならない。本来、海上保安庁や海上自衛隊が実力で排除すべきものである。しかし、安全保障に関するわが国の対処指針は武力の行使を最大限抑制するものであって、然らば私はあえて放水砲を断行すべきであると強く訴える。その予告を明確にすることを条件とする。中国が近時、南シナ海でフィリピン・コーストガード(公船)に向けて放水砲を頻繁に使用していることを良き参考にすべきである。


政治家の決断、マスコミの役割と責任

領土的侵略という中国の覇権主義を甘く見てはならない。今、最も必要なものは、国家の意思と決断である。自衛隊も海保もトップから現場隊員まで物理的準備と精神的覚悟はとっくに出来上がっており、待たれるのは政治の「決断」である。祈るらくは、政府の、また政治家(特に自民党)の「決断」こそが急がれる。政治の「やれ」という命令・指示であり、「後は心配するな」という包容力と度量である。

海警船はこのところ何カ月だか、継続して侵入していることを、各紙はいかにも誇るべきニュースの如く伝えていないか。侵入、徘徊(はいかい)、居座り、退去といった一連の不法な行動を、海警船があたかも勤務地に出勤して自主退出するかのような報道(表現)をしていないか。その裏では日本の海保船が徹底的に規制し、最後は領海外にたたき出しているのが実態だ。わが海保の危険極まる闘いが正確に伝わらなければ、国民の安心感も感謝も育たない。マスコミには「しっかりしろ、怠けるな、君らもまた祖国・日本のためにあるのだろうが」と、声を大にして怒鳴りたい。

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