台湾の頼清徳総統が就任した20日以降、台湾の芸能人が「中台統一」「私は中国人」といったメッセージを発信するケースが相次いでいる。中台の違いを強調する頼氏を中国は「独立派」と強く批判していて、中国にも活躍の場を求める多くの台湾人芸能人は中国政府の意向や世論を意識せざるを得ない。
「台湾独立は死に至る道だ。祖国統一は止められない!」
中国国営中央テレビは22日、短文投稿サイト「微博(ウェイボー)」に設けた公式アカウントから、このようなメッセージを投稿した。投稿は1700万回以上転載され、台湾メディアによると、台湾の芸能人約50人も含まれていた。「台湾は祖国の懐に戻らなくてはならない」との言葉を付けた芸能人もいた。
日本でもファンの多いロックバンド「五月天(メイデイ)」が24日に北京の国家体育場(通称・鳥の巣)で行ったライブでは、男性ボーカルが「私たち中国人」と発言。世界ツアー中の歌手・蔡依林さんも同日、中国・江西省南昌でのライブで観衆に「私たち中国の南昌」と呼びかけた。
それぞれの言動の意図は明らかになっていない。だが頼氏の就任直後に一斉に発信があったことから、台湾では巨大な中国市場での芸能活動を左右する中国当局やファンを意識したものだとの見方が一般的だ。台湾のテレビは「中国による頼政権への攻撃の一環」とする識者の分析を伝えた。
中国は、台湾を自国の一部とする「一つの中国」原則の受け入れを台湾側に迫っている。だが台湾・政治大による世論調査(2023年)では、自分自身を「台湾人」と考える人は62%で、「中国人」と考える人の2%をはるかにしのぐなど、中台の意識には大きなギャップがある。
こうした中で起きた芸能人の「意見表明」に対し、台湾のファンからは失望の声が上がっている。頼氏は26日、台湾人芸能人が中国で政治的態度を表明するよう迫られるケースは今後も続くだろうとした上で、「重要なのは(芸能人らが)心の中で何を思っているかだ。我々はそれを理解し、尊重すべきだ」と呼びかけた。【台北・林哲平】
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