北朝鮮の国家航空宇宙技術総局は27日、北朝鮮が同日に軍事偵察衛星を発射したが、失敗したと発表した。国営朝鮮中央通信が28日未明に伝えた。同通信は、衛星を載せたロケットが飛行中に空中で爆発したと報じている。国家航空宇宙技術総局によると、新しく開発したエンジンに原因があった可能性があるという。
この発表に先立ち、韓国軍合同参謀本部は27日夜、北朝鮮が27日午後10時45分ごろに、西海(ソヘ)衛星発射場がある北西部・平安北道東倉里(ピョンアンプクドトンチャンリ)一帯から南の方角へ向けて「軍事偵察衛星」を発射したと明らかにしていた。また、韓国軍は北朝鮮側の黄海の海上で発射体の「多数の破片」を探知したという。
韓国軍は「韓日米のイージス駆逐艦を海域に事前展開させ、態勢を整えていた」とし、「衛星の発射は弾道ミサイル技術の活用を禁止する国連安保理決議に違反した挑発行為だ」と非難するコメントを発表した。
2023年以降、北朝鮮による軍事偵察衛星の発射は4回目だが、このうち失敗が3回となった。金正恩(キム・ジョンウン)政権は、24年に計3基の軍事偵察衛星を打ち上げる方針を示しているが、困難だとの見方も出ている。
北朝鮮は23年5月と8月、相次いで軍事偵察衛星の打ち上げに失敗。ロシアのプーチン大統領は同年9月、金正恩朝鮮労働党総書記との首脳会談で、人工衛星開発に協力する意向を表明した。その2カ月後の同年11月の打ち上げで北朝鮮は、初めて軌道投入に成功したと発表していた。ロシアの技術的な支援があったとみられている。
今回の発射に際しても、韓国の聯合ニュースが26日に、政府高官の話として、衛星打ち上げのため多くのロシア人技術者が訪朝したと報じた。露側の厳しい検証基準でロケットのエンジンの燃焼試験を念入りに繰り返していたという。
27日にはソウルで日中韓首脳会談が開かれ、核・ミサイル開発を続ける北朝鮮問題を巡って「朝鮮半島の非核化、拉致問題についてそれぞれの立場を強調した」と共同宣言に明記していた。今回の発射は、効果的な時期を狙ったとみられる。
日本政府も27日夜、北朝鮮から弾道ミサイルの可能性があるものが発射されたと発表し、沖縄県を対象に一時、全国瞬時警報システム(Jアラート)を発令した。
林芳正官房長官は27日深夜から28日未明にかけての記者会見で、発射体について「黄海上空で消失し、宇宙空間への物体の投入はされていないと推定している」と言及。北朝鮮に対しては北京の大使館ルートを通じて「厳重に抗議し、強く非難した」と説明した。発射に伴う航空機や船舶などへの被害情報は確認されていないとした。林氏は「(北朝鮮が今後)更なる挑発行為に出てくる可能性がある」とも語った。【福岡静哉、日下部元美(ソウル)、安部志帆子】
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。