パリ五輪開幕まで2カ月。パリでの開催は100年ぶりということもあり、街は盛り上がっていると思いきや、冷静に見守っている現状です。多く聞かれたのは不安や懸念の声でした。ウクライナ侵攻やガザ地区での紛争、世界的な情勢不安もあって、パリではテロへの懸念が高まっています。パリ五輪の開会式は、夏の五輪史上初めて、競技場の中ではなく街中で行われることが大きな理由です。揺れるパリの現状を取材しました。


■“史上初”セーヌ川で開会式へ

コンセプトは「街中にスポーツを」。パリが誇る世界的な観光名所が競技会場になります。コンコルド広場は都市型スポーツの巨大なパークに。エッフェル塔の足元にはビーチバレーの会場となる仮設のスタジアムが。英雄ナポレオンが眠る『アンヴァリッド』の前の庭にはアーチェリー会場が設けられます。

そして最も注目されているのが“夏の五輪史上初”への挑戦。競技場の外、セーヌ川を舞台に行われる開会式です。周囲を競技会場となる名所に囲まれた6キロのコースを、各国の代表選手らは東から西へ、セレモニーが行われるトロカデロ広場まで進みます。川沿いや橋には観客席が設けられ、30万人以上が世紀のイベントを祝います。選手らを運ぶのは94艇のボートで、その姿は80もの巨大スクリーンに映し出されます。セーヌ川に欠かせない橋は幻想的に彩られ、パフォーマーたちの舞台ともなり、船団とともに開会式を盛り上げます。

■セーヌ川 水質改善 「開会式までに」

パリでの五輪は1924年以来100年ぶり。華やかな開会式が迫るなか「水質悪化」と「テロ対策」という2つの課題に直面しています。

女性
「懐疑的です。セーヌ川を本当に泳げるのかは怪しいですね。水質は問題ですよ」

マラソンスイミングやトライアスロンの水泳の競技会場になっているセーヌ川。長らく国によって遊泳禁止とされていますが、五輪の開催が決まり、水質改善の取り組みを続けてきました。しかし、去年8月、テスト大会が相次いで中止に。大雨が降ると、下水管からあふれた水が路上のごみなどと共に直接セーヌ川に流れ込み、水質を悪化させてしまうためです。

対策の1つが、今月完成した地下の巨大な貯水槽。5万立方メートルの雨水を一時的に貯めることで、大雨の際に川へ下水が流れ込むのを防ぎます。選手は安全に泳げるのか、副市長に直接尋ねました。

パリ市 ピエール・ラバダン副市長
「8年前から行ってきた水質改善の様々な対策・投資が、大会の数週前には一斉に完了するのです。7月26日(開会式)までに全てが整うと確信しています」

■“最大の懸念”開会式のテロ対策

ウクライナとガザをめぐり、緊迫の度合いを増す世界情勢。開会式の警備について、テロ対策の司令塔・内務省の担当者はこう話します。

内務省五輪担当 カミーユ・シェーズ広報官
「開会式ではフランスを“止める”のです。開会式の1時間前から飛行禁止空域を設定し、パリの150キロ圏内は飛行機が飛べなくなります」

パリから半径150キロ、一部は海に達するほど広大な範囲が、5時間以上にわたり、一切の飛行禁止区域となります。シャルル・ド・ゴール空港を含む3つの空港も、その間は閉鎖。通常この時間帯は600便ほどが運航しています。空からの危険を防ぐため、完全な空白域を作り出すというわけです。

止めるのは陸上もです。開会式の1週間前から、会場の周囲に設けられる入場制限エリア『SILT』。立ち入るためには、身分証明書や顔写真などの事前登録が必要で、住民も例外ではなく、もちろん労働者や観光客も対象です。レストランなどの店も多いエリアですが、営業に支障はないのでしょうか。

制限エリア内 レストランオーナー
「営業の制限は一切受けていません。閉ざされた競技場だけでなく“わが家”にも心を込めて皆様をお招きするわけです」

“開かれた五輪”だからこそ、警備に欠かせない存在も。開会式で警察官ら4万5000人と共に現場で対応にあたる民間の警備員です。大会全体で2万2000人が必要と見込まれています。その養成講座には通う人が増えているといいます。

■セーヌ川避ける “プランB”も

あらゆる面で準備が進んでいますが、まさかの事態への備えも。セーヌ川以外で開会式を行う代替案もあるといいますが…。

内務省五輪担当 カミーユ・シェーズ広報官
「仮にプランBプランCとなったら、従来の会場、例えばスタジアムを選ぶことになります。ただ、規模が小さくなってしまうので、7月26日に向け、セーヌ川の治安対策の方に全力を注いでいるのです」

▶「報道ステーション」公式ホームページ

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。