イスラエルにラファへの攻撃の即時停止を命じた国際司法裁判所の法廷=オランダのハーグで2024年5月24日、ロイター

 パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、オランダ・ハーグの国際司法裁判所(ICJ)が24日、イスラエルに対して、最南部ラファへの攻撃の即時停止を求める仮保全措置(暫定措置)命令を出した。これに対し、イスラエルの戦時内閣に加わるガンツ前国防相は「正当で必要な戦闘は継続する」と表明した。命令に法的拘束力はあるが強制的な執行手段はなく、実際に攻撃が止まる見通しは低い。

 命令は南アフリカの申請を受けて出された。昨年10月にイスラエルとガザ地区のイスラム組織ハマスの戦闘が始まって以降、ICJが攻撃停止の命令にまで踏み込んだのは初めて。命令では、イスラエルが制圧しているラファ検問所の開放も要求。イスラエルに対応状況を1カ月以内に報告するように求めた。

 ICJのサラム裁判長は、ラファでの人道状況は「悪化している」とし、イスラエルの対応が十分ではないとの認識を示した。その上で「パレスチナの人々を物理的に破壊するような生活状況を(人々に)押しつけるラファでの軍事攻撃は即座に停止しなければいけない」と指摘した。

 これに対して、イスラエルの外務省などは声明で「虚偽で言語道断だ」と反発。「パレスチナの人を物理的に破壊するような攻撃はしていないし、今後もするつもりはない」と主張した。国内の専門家の間では、ICJの命令は「物理的な破壊をもたらす攻撃」でなければ作戦は継続可能と解釈できるとの見方がある。

 イスラム組織ハマスは、ICJの決定を歓迎する声明を発表した。「ラファだけでなく、ガザ全体での侵略やジェノサイド(集団殺害)の停止を求める決定が出されることを期待する」と主張した。

 南アフリカは昨年12月、イスラエルによるガザ侵攻はジェノサイド条約違反にあたるとしてICJに提訴し、審理が続いている。ICJはこれまで、イスラエルにガザでのジェノサイドの防止を求める暫定措置命令のほか、人道支援物資の搬入拡大を求める暫定措置命令を出している。【エルサレム松岡大地】

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