21日、シンガポール航空機が乱気流に巻き込まれ多数の死傷者が出ましたが、要因のひとつに挙げられているのが、予測が困難な「晴天乱気流」です。その発生率は温暖化の影響で、今後さらに高まるといわれています。
■飛行中 突然の揺れ「晴天乱気流」か
加藤シルビアキャスター:
シンガポール航空機が見舞われた大きな揺れについて見ていきます。
事故があった機体は21日にロンドンを出発し、シンガポールに到着する予定でした。
飛行中、タイの上空で乱気流に巻き込まれました。乗客・乗員229人のうち104人が怪我をして、1人が亡くなりました。
その原因の一つとして考えられているのが、“晴天乱気流”というものです。一体どういうものなのでしょうか?
通常、乱気流は雲の中で発生して目視も可能だということですが、晴天乱気流は雲がないような場所で、局地的に気流が乱れているところなので、目視での確認やレーダーでの探知はできません。
速さの異なる気流がぶつかる場所で規則的な気流の波が発生し、乱れ始めると飛行機を揺らすほどの大きな気流の波になるそうです。機内ではシートベルトをしていないと、天井に叩きつけられてしまうということもあるそうです。
そして、問題となった機体の高度の推移を見ていきます。
安定して飛行していた機体が、ある地点から激しく上下を繰り返しているのがわかります。
3秒で60mも下降し、下降しきった場所から上昇しきるまで、実に34秒の間に約145m上昇しています。その後、機体は持ち直して安定した高度に戻っていくという変化がありました。
ホラン千秋キャスター:
乱気流に入る際のサインや、機内アナウンスで“皆さん席に着いてください”“シートベルトをしてください”と事前にお伝えすることが客室乗務員からすると可能だと思うのですが、晴天乱気流は読めない、見えないという点があります。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
パイロットの方でも晴天乱気流が起きるときはわからないというような報道も聞いています。私たちができることは基本のことだけです。“移動中もシートベルトをしてください”という機内アナウンスに意味があるのかなと正直思っていたところもあったのですが、意味があるということですよね。
井上貴博キャスター:
寝ている時や映画を見ていてゆったりしている時にいきなりランプがついたら、即座に反応できないかもしれません。しかも体感的にジェットコースターの落下と同じくらいだということです。そのような状況でシートベルトをしていないということは相当な状況だったのだろうと思います。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
至極当たり前のことですが、僕たちは空を飛ぶようにはできていません。人間が空を飛んでから100年ちょっとの歴史に対して、安全性なども徐々に高めていきましたが、シートベルトを“する”“しない”“気を付ける”というヒューマンエラー、人間の部分は私たちが気をつけていかないと、結局は変わらないわけです。
■「晴天乱気流」遭遇したら? 検知システム 研究進む
加藤キャスター:
晴天乱気流を検知する“ドップラーライダー”という乱気流検知システムがあります。
大気中にある微細な粒子からの光を受信して、波長などを調査することで、気流の変化の検知が可能です。
実際、運用もされていて、地上設置型です。羽田空港などの主要空港で離着陸などにも活用されていますが、地上にあるため、検知できる高度に限界もあります。また、かなり大きく、飛行機への設置が難しいため、軽量化を研究中です。
では、晴天乱気流に我々が巻き込まれてしまった時はどうすべきか、航空評論家・元日本航空機長の小林宏之さんによると、「ベルト未着用の人が多かった事が大きな被害に繋がったのでは。目に見えないとはいえ一番先に感知するのはパイロット。着用の案内が出たら速やかにベルトをしめ、大きな揺れの場合はベルトをきつくしめてください」ということです。
ホランキャスター:
ベルト着用のサインが出たらもちろん着用するのは当たり前ですが、“着席の際はシートベルトをしめてください”という言葉の重みをしっかりと噛み締めなくてはならないですね。
歴史・時代小説家 今村翔吾さん:
“日本の航空機だけがアナウンスをしている”という報道もあって、海外ではあまり“ランプが点いていない時は…”というアナウンスを行っていないと聞いたのですが、こういう事態が起きたことを皆さんが知ったことで、意識してベルトを着けるようにした方が良いかもしれません。
井上キャスター:
日本の航空各社も、AIなどを用いた分析・研究をコストをかけてやっているそうです。これから技術が上がっていくと思いますが、1人1人の意識も大切かもしれません。
==========
<プロフィール>
今村翔吾 さん
「塞王の楯」で第166回直木賞 受賞
歴史・時代小説家
30歳までダンス講師
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。