ロシアの隣国ジョージアの議会で可決された、いわゆる“スパイ法案”。大統領が拒否権を発動し、抗議デモも激化する中、与党側はなぜ、この法案にこだわるのでしょうか。
記者
「こちらトビリシの中心部です。法案が可決した後も連日、抗議する学生や市民らが声をあげています」
ジョージアやEU=ヨーロッパ連合の旗を身にまとった若者たち。法案に強い危機感を持っています。
デモに参加する学生
「もし、この法律を許してしまえば、ヨーロッパで私たちの居場所はなくなります」
今月14日に議会で可決された法案は、外国から資金提供を受ける団体を事実上の“スパイ”とみなすものです。
野党などは、ロシアのプーチン政権が同様の法律で批判を抑え込んできたとして、ジョージアでも権威主義化がすすむと反発を強めています。
ズラビシビリ大統領は法律として成立させるために必要な大統領の署名を拒否しました。
ジョージア ズラビシビリ大統領
「これはロシアの法律であり、我々の憲法に反します」
ジョージアはロシアによるウクライナ侵攻後、EUへの加盟を申請し、去年12月に加盟候補国入り。しかし、法案にはEU側も懸念を示していて、成立を強行させれば、加盟が遠のくとけん制しています。
それでも与党側は議会で改めて採決し、拒否権を覆してでも成立を目指す構えです。
なぜ、そこまでこだわるのか、与党幹部に聞きました。
ジョージアEU統合委員会 ボチョリシビリ委員長
「ジョージアはNATO(北大西洋条約機構)のメンバーでもないし、まだEU加盟国でもない。この地域で行動するには、倍以上の注意が必要になります」
ジョージアは2008年にロシアの侵攻を受け、国内にはいまも親ロ派が実効支配し、ロシア軍が駐留する2つの地域があります。
一方で、ロシアとの経済的な結びつきも強く、EU加盟を目標に掲げながらもロシアとも向き合わざるをえないジョージアならではの事情があるというのです。
ウクライナ侵攻後、多くのロシア人が逃れてきたジョージア。彼らに法案をどう思うか聞いてみると。
独立系メディアで働いていたロシア人
「ロシアにいた身として、これだけは言えます。この法案は市民のためにはなりません」
与党側は月内にも再び採決に踏み切るとの見方が出ていて、緊張が高まっています。
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