「大変な悲劇だ」「大統領が代わっても政治に影響はない」――。イランのライシ大統領の事故死を受け、首都テヘランの市民の間では20日、さまざまな声が聞かれた。イランメディアは同日、国内各地でライシ師の死を悼む市民の様子を報道。だが、ライシ師は国民の間では不人気だったといわれるだけに、毎日新聞の取材に応じた市民からは冷静な見方も目立った。
「悲しくもうれしくもない。大統領といっても、政府の人間の一人にすぎない」。翻訳者のアンナヒタさん(30)はこう語り、ライシ師が死亡しても「すべて今まで通り、何も変わらないだろう」との見方を示した。
ライシ師が当選した2021年の大統領選は、投票率が過去最低の48・8%で、得票数は有権者全体の3割にとどまった。22年に始まった反ヘジャブ(スカーフ)デモを強硬に弾圧したこともあり、ライシ師を支持する国民はあまり多くなかったとされる。
法学校の女子学生(31)は「大統領の死に打ちのめされている。国中が大変な悲劇を嘆いている」と話したが、元会社員の男性(62)は「大統領はお粗末な業績で人気がなかった。事故で民衆が悲しんでいるとは言えない」と指摘。プログラマーのレザさん(38)は、最高指導者のハメネイ師が最終決定権を持つ独特の統治体制を理由に「(政治に)大きな変化はないだろう」と述べた。
会社員のリダさん(25)も、政治への影響は少ないとの見方を示し「イラン国民はずっと(経済制裁などの)圧力の中で過ごしてきた。イランには未来への希望がない」と嘆いた。【カイロ金子淳】
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