戦争のたびに導入される新たなテクノロジー。ウクライナやガザの戦場では今、最新鋭の技術が人の命を奪うことに使われています。そこから見えてくるものとは…
兵士の命を危険にさらさずに、敵にダメージを与える…ドローンが変える戦場のカタチ
新たにロシア軍が北東部で攻勢を強めるなど、混迷を深めるウクライナ侵攻。この戦争で、これまでになく大きな役割を担う兵器があります。
虫の羽音のようなプロペラ音。飛んでいるのは円筒形の爆弾を積んだドローン。この映像には、ドローンから爆弾を切り離し、塹壕に落とす様子も…
史上かつてないほど、戦場に大量のドローンが投入された今回のウクライナ戦争。
安くて数万円程度のドローンが、数億円もする戦車を破壊。遠隔操作で兵士の命を危険にさらすことなく、効率よく敵にダメージを与える兵器は、戦場の様相を大きく変えました。
歴史を振り返れば、戦争のたびに、人類はこうした新たな兵器を次々導入してきたのです。
「第1の軍事革命」火薬
19世紀、スウェーデンの化学者アルフレッド・ノーベルが発明したダイナマイトは、普仏戦争で初めて使われます。
また第一次大戦では、戦車や機関銃といった新兵器が戦場に投入。
第二次大戦では、「爆撃機」による空爆で、多くの市民が犠牲になりました。
「第2の軍事革命」核兵器
さらに、圧倒的多数の命を奪う究極の兵器、「原子爆弾」が開発され、使用されたのです。その後も…、
アメリカの無人攻撃機プレデターなど、大型の無人機を遠隔操作で誘導し、標的を攻撃するような新技術が兵器に導入されてきました。
現在の兵器開発と科学技術の関係を、専門家は…
拓殖大学:佐藤丙午教授(安全保障論)
「今の戦争は、効果的に、効率的にいかに相手を殺傷するかが中心。技術を通じて遠隔攻撃によるリモートを活用することで人の死が余り見えないような戦争を行った場合、戦争というのはゲーム感覚になる懸念もあります」
「第3の軍事革命」AI兵器
「火薬」「核兵器」に次ぐ、「第3の軍事革命」をもたらすとされるのが、「AI兵器」です。
先月公表されたアメリカでの実験映像。AIが操縦する戦闘機と、人間のパイロットが空中戦を繰り広げています。高い技量を必要とする戦闘機のパイロットの役割すら、いまやAIが担います。
さらに、開発中のAI兵器では、ドローンが自律飛行し、遭遇した人間に敵意があるかどうかまでAIが判断。「敵意あり」とみなせば、ドローンが自爆するのです…。
AI技術で住民の情報をデータ化 攻撃対象を抽出
イスラエル軍による攻撃で、3万5千人を超える犠牲者が出ているガザ。その攻撃に、AI技術を利用している実態が明らかになりました。
それが「ラベンダー」と呼ばれるAIシステム。現地の調査報道によると、ガザの住民およそ230万人の情報をデータ化し、ハマスなどの戦闘員と疑われる人物を、ラベンダーが攻撃対象として抽出。
全く関係ない人物を特定してしまうミスが、指摘されているにもかかわらず、空爆を判断する人間が、標的を確認してから攻撃を許可するまでの時間が、わずか20秒だったケースもあったといいます。
このラベンダーにとどまらず、イスラエルは、人間を介さず、AIが独自に攻撃を判断する「自律型AI兵器」の開発も進めています。
AI技術の軍事転用に専門家は「大きく暴走する可能性」
AI兵器の開発にどう歯止めをかけたらいいのか、3月に行われた、その規制を巡る国連の会議では…
ロシア代表
「ここで将来の開発に影響をもたらす性急な決定をすべきではない」
規制に慎重な姿勢を崩さない国もあり、議論はかみ合わないまま。AIという先端技術まで軍事転用される現状に、専門家は…
拓殖大学:佐藤丙午教授(安全保障論)
「AIを使った兵器システムは、大きく暴走する可能性、機械が独自に判断して解釈し(攻撃を)行っていく怖さがある。そうなった時に、我々は機械に動かされて戦争をすることになってしまいますので、そこの怖さっていうのを、我々は十分認識すべき」
ダイナマイトを発明したノーベル。そして、原爆の父と呼ばれたオッペンハイマー。ともに、自らの生み出した技術や兵器が、多くの犠牲者をもたらしたことの責任を感じ、心の痛みにさいなまれました。
AI技術が戦争に利用され、多くの命を奪うこととなった場合、その責任は一体誰が負うのでしょうか?
(「サンデーモーニング」2024年5月19日放送より)
鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。