社債の購入を無登録で勧誘したとして、警視庁生活経済課は15日、金融コンサルタント会社「ザ・グランシールド」(東京都中央区)社長、中村佳敬容疑者(46)=東京都江東区豊洲1=ら男女8人を金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで逮捕したと発表した。
中村容疑者らは、債務保証会社「トラステール」(東京都千代田区)から請け負い、同社の社債などの販売名目で2017~23年、36都府県の約1300人から計約80億円を集めたとみられる。このうち約10億円が中村容疑者に渡っていたといい、高級外車の購入費や遊興費などに流用されたとされる。
警視庁は、中村容疑者らが元本保証や高配当をうたい実態のない事業への投資を募ったとみて、詐欺容疑も視野に捜査を進める。
他に逮捕されたのはトラステール社長、高橋章容疑者(61)=千代田区内神田1=ら。8人の逮捕容疑は、国の登録を受けずに20年4月~23年1月ごろ、男女16人にトラステールの社債購入の申し込みをするよう勧誘したとしている。この16人は30万~1500万円分の社債を購入していたという。警視庁は容疑者8人の認否を明らかにしていない。
グランシールドの従業員らはファイナンシャルプランナーを名乗って、顧客を勧誘。社債の購入について「年利20%の配当を受けられ、5年後に元本を全額返却する」「人気の商品ですぐに無くなる。iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)よりもお勧め」と説明していたという。
関係者によると、中村容疑者らは顧客にトラステールの事業について、医療機関が診療報酬請求権を債権化して金融機関から融資を受ける際「返済を連帯保証する代わりに、融資額の3%を保証料として受け取る」と説明。医療機関が債務不履行に陥っても「大手損害保険会社が返済を肩代わりするため、事業が破綻するリスクは低い」と誘っていたという。
警視庁はこの事業スキーム自体に実態がなかったとみて、全容解明を進める。配当は23年2月ごろから止まっていた。
金商法では、購入対象者が50人未満の社債は「少人数私募債」と規定し、原則、金融庁に登録せずに発行できるとしている。中村、高橋両容疑者はトラステールの社債が、少人数私募債であるかのように装い、実際には不特定多数に販売していたとみられる。
15日には、社債の購入者ら約10人が都内で記者会見し、50代男性は「家族で蓄えた貯金も全て取り崩して投資した。生活資金もなくなり、非常に困っている」と訴えた。【加藤昌平、森田采花】
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