中国電力島根原発の(右から)1号機と2号機=松江市で2023年11月14日、本社ヘリから西村剛撮影

 中国電力島根原発2号機(松江市)の地震や火山への対策が不十分だとして、地元住民らが中国電に運転の差し止めを求めた仮処分申請で、広島高裁松江支部(松谷佳樹裁判長)は15日、訴えを却下する決定を出した。2号機は2012年から定期検査で運転していないが、中国電は12月の再稼働を予定している。

 仮処分は23年3月、島根、鳥取両県の住民4人が申し立てた。住民側は、原発そばにある「宍道(しんじ)断層」で起きる地震が十分に考慮されていないと主張。想定される地震の最大の揺れとして耐震設計の目安となる「基準地震動」を820ガル(ガルは加速度の単位)と定めたのは不十分だと訴えた。

 訴えではさらに、原発の南西約55キロにある活火山の三瓶山について、噴火に伴って原発周辺に降りかかる火山灰などの想定量が不十分だと指摘。原発の30キロ圏内に島根、鳥取両県6市の計約45万人が暮らすことも踏まえ、現在策定されている避難計画では周辺住民が放射線被ばくを避けて速やかに避難できず、実効性がないとも主張した。

 これに対し、中国電側は宍道断層による地震を特別に考慮する必要がないうえ、国の原子力規制委員会の判断も同様だと反論。原発施設の耐震性は十分な余裕を持たせており、「安全性は確保されている」などと主張し、申し立ての却下を求めていた。

島根原発

 島根原発は全国で唯一、県庁所在地に立地している。出力82万キロワットの2号機は事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉。1989年に運転を始めたが、12年から定期検査で停止している。

 再稼働に向けては21年9月、福島事故後の新規制基準の適合審査に合格。22年6月までに地元の島根県や松江市が運転に同意した。再稼働の時期について中国電は当初8月を予定していたが、安全対策工事の遅れで12月に延期するとしている。島根1号機は廃炉作業中で、3号機は建設が進んでいる。

 2号機を巡っては、地元住民らが運転差し止めを求める正式裁判も高裁松江支部で続いている。【目野創】

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