長崎県佐世保市で2004年6月、小学6年生の御手洗怜美(さとみ)さん(当時12歳)が同級生の女児に殺害された事件で、被害女児の次兄(34)が14日、衆院第1議員会館(東京都千代田区)で講演し、犯罪被害者のきょうだいへの支援拡大を訴えた。14年ごろから自身の体験を伝えてきたが、国会議員や官僚の前での講演は初めてという。
事件が起きたときは中学3年生だった。学校にいた6月1日の昼過ぎ、担任に校内の一室に呼ばれた。校長から渡された紙には、妹の名前と、同級生からカッターナイフで切りつけられて死亡したというニュース記事が書かれていた。
周囲にいた7、8人の先生は、うつむいたり泣いたりしていた。「同級生とは誰ですか」と声を振り絞って聞くと、校長は「今は考えなくていい」と答えた。
妹の死を知ったその瞬間は今でも夢に出てくる。「被害は警察から学校以外の場所で伝えてほしい。子どもの日常である学校がトラウマの場所にならないようにしてほしい」と訴えた。
数時間後に会った父恭二さん(65)=当時・毎日新聞佐世保支局長=は目の焦点が合っていなかった。「自分がおかしくなっていると知られると、父が死ぬかもしれない」と思い「父の前で泣かない、逆らわない、笑顔でいる」と誓った。
高校進学後、突然、教室に行けなくなり、養護教諭に初めて自身の経験を打ち明けた。その後、恭二さんと一緒に精神科やカウンセリングに通い「心配をかけても大丈夫なんだ」と気づいたという。
「きょうだいは親の前では自分の気持ちを言えないが、親を通さずに支援につながれる機会は少ない。問題を早く発見して、伝えられる環境を整えてほしい」と呼び掛けた。【菅健吾】
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