障害者グループホーム運営大手「恵」(本社・東京都港区)が障害福祉サービスの報酬を不正請求したなどとして、愛知県と名古屋市は、同社が運営する県内5施設の事業者指定を6月中旬にも取り消す方針を固めた。障害者総合支援法に基づき厚生労働省が「連座制」を適用すれば、全国12都県に約100ある同社の施設は運営できなくなる可能性がある。県などは利用者に影響がないよう対応を急ぐ。
同社を巡っては厚労省が昨年12月、利用者から実費を大きく上回る食材費を組織的、継続的に過大徴収し、差額を収益としていたとして改善勧告を出した。過大徴収は2018年以降、愛知県の26施設だけでも総額計約2億1800万円に上り、名古屋市などは「経済的虐待」と認定した。
さらに同社は、愛知県内の複数の施設で勤務実態のない職員が働いていたかのように装うなどし、障害福祉サービスの報酬を不正請求していたことも発覚。不正額は名古屋市だけでも約1億円に上る。
愛知県は、県が管轄する同県幸田町の施設「ふわふわ幸田」の指定を取り消す方針で、処分前に意見を聞く「聴聞」の日程を同社に通知した。名古屋市も市内の4施設について指定を取り消す方針を固め、近く通知する。障害者総合支援法に基づく最も重い行政処分で、処分を受けると施設の運営はできなくなる。
厚労省が同社の組織的関与を認めた場合、全国にある他の施設も6年ごとの事業者指定の更新を認めない「連座制」が適用され、全ての施設で事実上運営が継続できなくなる。
同社は12年に設立され、18年に名古屋市でグループホームを開設したのを皮切りに全国で放課後等デイサービスや訪問看護ステーションなどを展開している。同社は「真摯(しんし)に対応していきたい」とコメントした。【加藤沙波】
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