プラカードを掲げ停戦を呼びかける加藤さん=中区で2024年4月17日午後6時26分、井村陸撮影

 パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスとイスラエルの戦闘が始まってから7日で7カ月が経過した。イスラエルとパレスチナの歴史を学ぶ学生団体に所属する上智大3年の加藤芽依さん(21)は複雑な思いを抱えながら、攻撃への抗議活動に参加している。

 加藤さんは、埼玉県和光市出身。高校時代の友人の紹介で国際基督教大学の学生団体に入会した。あまり知識はなかったが、活動を通じてイスラエルやパレスチナの学生たちの話を聞き、戦闘が日常的に起こっていることを肌で感じ、その理由や歴史を詳しく知りたいと関心を持ち始めた。

 2023年10月7日の午後、来日しているガザ地区の中学生3人の講演を聞きに行った時のことだ。中学生の1人がショッキングな言葉を発した。「1時間前にハマスが攻撃を始めた」。学生たちは講演会場に向かう途中に戦闘開始を知ったという。落ち着いて話している様子を見て「何で冷静に話すことができるのだろうか」と衝撃を受けた。

 イスラエルも反撃し、パレスチナ側は連日攻撃を受けている。全国で、プラカードや旗などを持ってパレスチナでの虐殺に抗議する活動が始まり、加藤さんも「こんな残酷なことがあってはいけない」という強い思いを持ち、東京のイスラエル大使館前や外務省前で抗議活動に参加。自身のSNSで東京のデモ活動の写真をアップしていた。

 一方で学生団体で知り合ったイスラエルの友人の1人から投稿に「これは何なんだ」と反論された。SNSにはデモの当日に「イスラエル=ナチス」と書かれたメッセージを掲げた人が写っていた。戦闘開始以降、イスラエルの住民がハマスによる攻撃や拉致被害を受けている状況について長文で送られてきた。その後、友人とは音信不通になった。

 「音信不通になったイスラエル人の友人の主張も分からなくはない」と悩むこともある。一方でイスラエル国内でも異なる主張の人たちもいる。SNSの投稿を見た別のイスラエルの友人からは「日本でも私たちのために声を上げてくれてありがとう」とメッセージが届いた。

 広島市中区の原爆ドーム前でデモ活動をしていることを知り、4月15日から連日参加。「だれもころすな!」と書かれたプラカードを持ち、通りかかる人々に停戦を呼びかけた。広島での活動中にもイスラエル人とみられる人から「その横断幕は何だ」「ハマスに人質を取られている人もいるのに、パレスチナを擁護している」と抗議される場面もあった。

 講演会で話を聞いたガザの中学生のように故郷が攻撃され、友人、家族を失う人たちを見たくない。加藤さんは「虐殺を辞めてほしいというメッセージを誰に向かって伝えなければならないのか考えて発信しなければならないと感じた」と語る。

 今後は大学を休学して、日本全国を巡る予定。「もう残酷な光景は見たくない。日本にいる第三者の自分にできる活動を続けていきたい」。停戦を呼びかけるデモ活動があれば各地で参加するつもりだ。【井村陸】

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