3月の延伸開業で北陸新幹線の終着地となった福井県敦賀市では、昼夜で経済効果に明暗が分かれている。人出増が顕著な昼間に対し、夜間は目立った変化が見られないのが現状だ。夜間需要の取り込みに向け、駅前では屋台イベントが開催されるなど新しい動きも出ている。行政も地元商店街への出店を後押しする施策を始めるなど、開業効果を最大化したい考えだ。【高橋隆輔】
4月末の大型連休序盤のJR敦賀駅前。日暮れ時の目抜き通りの歩道には2軒の屋台が並び、唐揚げと中華料理が売られていた。福島県からの出張中に、同僚と2人で立ち寄った大関竜也さん(35)は「屋台ってテンションが上がる。気になって寄りたくなりました」と話し、歩道に設置されたテーブルでチャーハンを平らげ、夜の街へ消えた。
同駅前では、「TSURUGA EKIMAE TERRACE」と題し、4月12日~5月19日まで、火、水を除く午後4時~午後9時、2~5軒の屋台が出店している。主催する敦賀駅前商店街振興組合の河藤正樹理事長は、街として夜の集客力が弱いと感じていたことから、企画を練った。河藤理事長は、「(競合する)近隣の飲食店も好意的に捉えてくれるなど、収穫は多かった」と話す。
イベントの背景には、行政の環境整備がある。敦賀市が商店街の賛同を得た上で、道路を管理する福井県に、駅前の歩道の拡幅を要望。歩道の幅を広くし集客イベントを開催しやすくすることが狙いで、新幹線開業直前に2メートルから4メートルへの拡幅工事が完了した。同市観光まちづくり部の小川明部長は「客単価を上げる上で、敦賀の課題は『ナイトタイムエコノミー』。(商店街への新規出店など)民間が投資したいと思う環境を、行政が先行投資して整えたい」と意図を話す。
県も同市と連携を強める。業種を問わず、同市内への店舗新築・改築に最大400万円(大型物件は2300万円)を補助する制度「敦賀まちづくり魅力UP応援補助金」には、県も基金を積んで支援する。制度を活用して飲食店出店を検討している50代男性は「改装費用がかなりまかなえ、魅力的。本気で観光客を呼び込み、満足させることを考える契機として良い制度だ」と評価。一方で、「補助した店のその後や、補助金の効果をきちんと追うかで、目的の達成度は変わるのではないか」と課題を話す。
杉本達治知事は4月26日の記者会見で、「駅前や商店街を歩く人が増え、投資意欲も上がっていると思う。今後もその背中を押すような支援制度を充実させたい」と話した。またとない機運を経済活性化につなげられるよう、行政には、現場のニーズに合った柔軟で粘り強い支援が求められる。
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