埼玉県日高市立武蔵台小中学校(児童生徒数303人)は、4月から中学生(同校7~9年生)の服装を自由化した。制服、体育用ジャージー、私服のどれを着て登校してもよい。この制度は県内の公立中で初めてという。
同校は小中一貫の義務教育学校だ。以前の武蔵台小・中を統合し昨年4月に開校した。7~9年生は計110人。大半はジャージーで登校し私服の生徒もいる。制服は「誰も着てこない」(秋馬信之校長)。制服があった昨年度と変わりなく、風紀の乱れやトラブルもないという。
秋馬校長は2022年に旧武蔵台中の校長に就任。翌年の新校作りのため教育の「当たり前」を考え直し、「制服は本当に必要か」と疑問を持った。制服を自分で着てみると「重い(動きにくい)」と感じた。洗濯しにくいのも気になった。
保護者の負担も課題だった。武蔵台中の制服は男女ともブレザーで一式の価格は男子で6万3000円余、女子は8万8000円余。他に登下校用のバッグなどに約2万5000円が必要だった。
当初、自由化には教職員や保護者から不安の声も聞かれた。「服装が乱れて生活も乱れないか」「学校への帰属意識が薄れないか」。昨年2月、小学5年以上の児童生徒と保護者、教職員に「制服は必要か」とアンケートすると、児童生徒は6割が「必要ない」と答えたが、保護者と教職員は約6割が「どちらかといえば必要」などだった。
ただ、義務教育学校が開校すると「同じ校舎に私服の小学生と制服の中学生がいることに違和感を覚える」という保護者も出てきた。その中で同5月に「カジュアルウイーク」を実施。7~9年生を1週間、私服で登校可とした。特にトラブルは起きなかった。
その後に2度目のアンケートをすると、今度は保護者も教職員も過半数が制服は「特に必要ない」と答えた。同7月、校長や保護者、元保護者らで作る「学校運営協議会」で自由化を決めた。
同9月には教職員が、開校以来30年あまり制服と校則がない千葉県印西市立西の原中学校を視察。同校は中学校にふさわしい服装なら私服で登校してよく、入学式やテストなどの日は正装としてブレザーなどを着る。このルールで学校運営に支障は出ていなかった。
視察後、武蔵台小中では「中学校にふさわしい服装」について授業をした。下着がはみ出す▽サンダルばき▽肌が肩まで出る▽あまりに派手▽パジャマ――などを、問題のある服装として生徒に教えた。これを踏まえて今年2月に、私服登校可の「カジュアル・マンス」を1カ月間実施し、問題なく過ごせた。
新年度からのルールは「学校にふさわしくない服装以外はOK」だ。ただし式典やテストの日は「正装の日」。従来の制服を着てもよいし、他の正装でもよい。新7年生には制服を買った子も買わない子も、卒業生からのリサイクル品を利用した子もいる。
保護者から「スカートの丈は?」などの質問が出るが明文規定は作っていない。秋馬校長は「ふさわしい服装を生徒が自分で考えてほしい」と話す。「制服は何も考えずに着る。私服だと、今日は暑い、雨だ、終業式だ、など天候や行事を考える。それができるようになってほしい」【高木昭午】
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