憲法記念日の3日、各地で憲法を考える集会が開かれた。護憲派も改憲派もそれぞれの立場から憲法に触れ、「この国のかたち」について議論を交わした。
護憲や反戦を訴える市民団体は「武力で平和はつくれない! とりもどそう憲法いかす政治を 2024憲法大集会」を東京都江東区で開き、約3万2000人(主催者発表)が参加した。参加者らは、政府の武器輸出政策転換の撤回やジェンダー平等社会の実現などを訴えた。
政府は3月、英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機を第三国に輸出できるようにする方針を閣議決定した。翌4月、岸田文雄首相は日米首脳会談で、自衛隊と米軍の指揮・統制を向上させることを確認した。これに対し、野党は「事実上、日本が米軍の統制下に入ることになる」と批判している。
集会では政府のこうした動きも話題になった。法律資格の受験指導校・伊藤塾塾長の伊藤真弁護士は「憲法無視の政治が進められようとしている。(一方で)それでもまだ表現の自由、集会の自由、選挙権が認められている。こういう時だからこそ、憲法の力を使いこなさなければならない」と強調した。
立憲民主党や共産党など野党幹部も姿を見せた。立憲の逢坂誠二・代表代行は自民党の裏金問題に触れ、「憲法は国会議員、公務員、裁判官を縛るものだ。憲法に縛られる側の人間が法律を犯しているかもしれないのに、声高に憲法改正を叫ぶのは異常な姿だ」と批判した。
目黒区の会社員、鈴木沙織さん(46)は「社会ではセクハラやパワハラが問題になっているが、(憲法の原理の一つの)基本的人権の尊重の観点からすれば守られるべきものが守られていないことになる。普段の生活に憲法が密接に関わっていると多くの人が気づくべきだ」と話した。
改憲を求める民間団体「美しい日本の憲法をつくる国民の会」などは、千代田区で「公開憲法フォーラム」を開き、大学教員らが講演した。会場には約800人が集まり、オンライン配信で約1万2000人(いずれも主催者発表)が視聴した。
会の桜井よしこ代表は「(改憲で)国のあり方を根本から立て直すのが私たちの思いです。立派な日本の国柄を基本とした憲法をつくるのです。そのような改正を目指しています」と改憲の意義を強調した。
また、岸田文雄首相の自民党総裁としての任期満了が9月に迫っていることにも触れ「岸田さんの背中を押して、国民の力でいや応なしに政治が(憲法)改正に走っていかないといけないような世論をつくりましょう」と訴えた。
集会では、その岸田首相のビデオメッセージも公開された。岸田首相は裏金問題について「政治不信を招いたことは、自民党総裁として心からおわび申し上げなければなりません」と陳謝した。そのうえで「憲法改正という重要な課題について、党派を超えて連携しながら、議論を行う姿を国民の皆様にお見せしていきたい」と述べた。
自民党憲法改正実現本部の古屋圭司本部長や国民民主党の玉木雄一郎代表らも出席し、主催者側から改憲を求める声明文を受け取った。
会場を訪れた品川区の非常勤講師、景山律子さん(80)は「米国は有事に日本を守ってくれないと思う。日本は自分たちの力で、国や国民を守るべきだ。そのためには改憲が必要です」と話した。【安藤いく子、大野友嘉子】
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