個展の告知をするコジヤジコさんのXの投稿=スクリーンショットより
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 「なら軽くがんばるか、光る番が来るからな。」

 上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる「回文」を10年以上にわたり、毎日X(ツイッター)に投稿し続けている人がいる。さいたま市の男性会社員「コジヤジコ」さん(46)。生み出した回文は3000作品を超え、昨年8月には絵本を出版、今月19日からは東京都内で初の個展を開くなど活動の幅を広げている。

X(ツイッター)で10年以上にわたり回文を投稿しているコジヤジコさん=さいたま市浦和区で2024年4月10日午後0時8分、加藤佑輔撮影
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 回文を作るようになったのは、2009年から。インターネット上で偶然見つけた回文を読み、「こんなに面白い文章表現があるのか」と刺激を受け、メモ帳に思い付いた作品を書き留めるようになった。より多くの人に自分の作品を読んでもらいたいと、13年にツイッターのアカウントを開設した。

 これまで生み出した回文の中で最も反響があった作品は、「良い骨格と ふくよかな腹 シワなき手 ステキなわしらは 仲良く 太く かっこいい」。今年2月に投稿すると、約2万件の「いいね」が付いた。投稿直後には、都内の社会福祉法人から「元気をもらえるすてきな作品なので、職員向けに配布する資料で紹介させてほしい」と連絡もあったという。

 他にも、2013年に発表した「橙(だいだい)は蜜柑(みかん)さ。赤は、血の色。命は、母さん。神は、偉大だ。」という作品もフォロワーから好評だった。

Xに投稿されているコジヤジコさんの回文=スクリーンショットより
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 回文の魅力についてコジヤジコさんは「反対から読んでも同じ意味にならねばならないという制約が、自由に言葉を選べる時の自分の頭の中で考えてもたどり着かない世界に作者本人をいざなってくれる」と語る。

 日常的に単語を反対に読んだり、単語同士を組み合わせたりする癖を付けている。「いろんな言葉をひっくり返していたら、たまたま作品ができたということもよくある」という。単なる言葉遊びという印象で終わらせず、「一つの詩としても成立する内容に仕上げる」のがこだわりだ。

23年8月に絵本を出版

東京都内で初めて開かれる個展のチラシ。イラストはコジヤジコさんが描いた=本人提供
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 22年には、コジヤジコさんの投稿を見た出版社から「作品を本にしたい」と連絡があり、23年8月に絵本「よるよ」(偕成社)を出版した。犬、猫、熊が回文で会話をしながら冒険に向かう物語で、絵はイラストレーターの中山信一さんが担当した。

 今月19日からは、初の個展を東京都台東区の「まめでんきゅう画廊」で開催する。展示作品は約130点で、このうち約50点は自身が描いたイラストを添えた回文だ。画廊のオーナーから「絵も味があるから、自分で描いた絵と回文を展示してみないか」と提案されたという。同27日には、回文の書き方を教えるワークショップも開く。コジヤジコさんは「回文でしか味わえない不思議な世界観にぜひ触れてもらいたい」と話している。

 個展は5月4日までの金、土、日のみ。ワークショップの参加は、まめでんきゅう画廊のホームページから事前予約が必要。【加藤佑輔】

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