「医療を必要とする全ての人への裏切り行為だ」。国立病院機構大牟田病院で障害のある利用者への性的虐待が繰り返されていたことに、筋ジストロフィーの患者らでつくる「日本筋ジストロフィー協会」代表理事、竹田保さん(63)は憤る。協会は1日、国立病院機構本部に抗議し、対応について説明を求めた。
自身も筋ジストロフィーの患者である竹田さんは「障害が重いだけに職員や家族に負担をかけている意識が強い。施設の選択肢も少ないため患者は声を上げにくい立場にある」といい、「職員側にこの程度なら大丈夫、誰にも言えないだろうという誤った過信が生まれたのでは」と話す。
障害者への虐待を巡っては福岡県の知的障害者更生施設「カリタスの家」で2004年、入所者に熱いコーヒーを無理やり飲ませて大やけどを負わせるなどの虐待が発覚したのを機に、11年に障害者虐待防止法が成立。障害者への虐待禁止や市町村への通報義務が定められた。
しかしその後も障害者や高齢者など弱い立場の人が虐待される事案は後を絶たず、厚生労働省によると、市町村が障害者福祉施設の従事者などによる虐待と判断した件数は22年度だけで全国で956件に上る。
日本社会事業大専門職大学院の曽根直樹教授(障害者福祉)は「異性の職員による介助は性的な問題への感覚が鈍磨してしまいがちだ」として同性による介助を一層進める必要性を指摘。「利用者は施設や職員に頼らざるを得ない弱い立場で、嫌だと言える環境を作っていく必要がある」と話す。【平川昌範】
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