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 山梨県が打ち出した富士山登山鉄道構想に対して、富士吉田市が猛反発しています。世界遺産を巡って何が起きているのでしょうか。

■富士山人気過熱 “目隠し”騒動も

「富士山登山鉄道構想」を巡り、揺れる地元 この記事の写真 富士吉田市在住 上小澤静江さん(91)
「私は100歳まで登りたい、富士山を愛しています。 もう腹が立って、しょうがない。だから私は(表に)出てきている」

 富士山に、鉄道はいらないと訴える住民。

富士山登山鉄道構想に反対する会
上文司厚代表

「白紙撤回に結実することを目指していますので」

 「富士山登山鉄道構想」を巡り、地元が揺れています。

先月30日「富士山を隠す」ための黒い幕を設置する工事が始まる事態に

 風光明媚な、日本が誇る世界遺産・富士山。しかしその周辺では、バスや車の排気ガスによる大気汚染が深刻化しています。

ごみが放置されるなどの迷惑行為が相次ぐ

 コンビニ店の上に富士山がそびえる人気撮影スポットでは、多くの外国人観光客が殺到し、ごみが放置されるなどの迷惑行為が相次いだため、先月30日「富士山を隠す」ための黒い幕を設置する工事が始まる事態になりました。

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■“登山鉄道”構想に地元反発

■“登山鉄道”構想に地元反発

山梨県が打ち出している「富士山登山鉄道構想」

 オーバーツーリズム対策として、山梨県が打ち出しているのが「富士山登山鉄道構想」です。

有料道路「富士スバルライン」

 今走行しているのが、富士スバルラインです。山梨県はまさにこの場所に富士山登山鉄道の構想を掲げています。

 富士山の麓から5合目をつなぐ有料道路「富士スバルライン」の道路上に、振動や騒音が少ない路面電車「LRT」を導入するという全長およそ24キロの構想。

一度に、120人の乗客を運ぶ

 上りがおよそ52分。下りがおよそ74分。一度に、120人の乗客を運べます。

 往復の運賃を1万円と想定した場合、年間およそ300万人の利用者を見込んでいます。

 車の通行がなくなるため、排出ガスは出なくなります。

 路面電車の運行本数を決め、完全予約制にすることで、客の数をコントロールし、混雑を抑えることもできるといいます。

事業費には、およそ1400億円かかると想定

 しかし事業費には、およそ1400億円がかかると想定されていて、山梨県は、知事自らが定期的に住民説明会を行っています。

山梨県 長崎幸太郎知事
「1400億円はすべての総事業費。これを全部、県が負担するわけではありません。車両とか、駅舎の建設、こういうものは民間の運行主体にお願いをしましょう。つまり鉄道会社にお願いしましょう。官民役割分担したいと思っている」

 説明会に出席した住民は、次のように話します。

説明会に参加した住民
「県の構想がよく分かりましたし、納得したし、ぜひとも実現してほしいなという気になりました」
「世界文化遺産ということもあるので、何らか対策していかなければいけないというのは感じますね」

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■地盤の不安定さを指摘する声も

■地盤の不安定さを指摘する声も

「富士スバルライン」で発生した土砂崩れ

 理解を示す人がいる一方、不安の声もあがっています。

 先月撮影された、路面電車導入の予定地とされる「富士スバルライン」の様子です。

 土砂崩れが発生し、大量の土砂で道路がふさがれてしまいました。

 番組スタッフが、土砂崩れが起きた現場を訪れてみると、かなり急な崖から土砂が落ちている様子がうかがえます。職員とみられる人が恐らく調査されています。しかし、かなり急で危険な作業です。

先月上旬に発生した雪崩

 先月上旬には、近くで雪崩も発生。富士山では、過去に何度も土砂崩れや雪崩が起きていて、地盤の不安定さを指摘する声もあがっています。

富士吉田市 堀内茂市長

 富士山の麓にある富士吉田市は、鉄道構想に反対の姿勢です。

富士吉田市 堀内茂市長
「富士山は今も毎日崩れているんですよ。常にこういう自然環境で脅かされているのが、現実の今の富士スバルライン。もしも、そんな時に電車が走っていたらどうなるのか。そういう意味からも、鉄道なんていうのはもってのほか」 富士山保全・観光エコシステム 推進グループ 清水郷平主任

 災害に関して、山梨県は車やバスに比べ、路面電車の方が、リスクが低いと主張しています。

富士山保全・観光エコシステム 推進グループ
清水郷平主任

「LRTは法律上、時速40キロが上限となっていますので、安全に止まることができると考えています。また、路面電車(LRT)は走行にあたり、集中管理システムを導入することを想定しています。このことで、二次災害の発生を防ぐことも可能と考えている」

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■新たな動き 反対団体が発足

■新たな動き 反対団体が発足

富士山登山鉄道構想に反対する民間団体が会見を行った

 こうしたなか、新たな動きがありました。

 富士山登山鉄道構想に反対する民間団体が会見を行い、発足を宣言する事態となりました。

富士山登山鉄道に反対する会
井上義景さん

「自動車、バス、排ガス対策ですかね。そういったものもEVですとか、どんどん交通の変化が起こる時代になってきておりますので、今の時点でそれを鉄道じゃなきゃ解決できないというのは、時期尚早ではないか考えている」

 地元の観光団体や富士山の山小屋などに所属する6人が結成。その顧問には、富士吉田市の堀内市長や市議会議員の名前もあります。

 「富士山登山鉄道構想反対」と書かれた自前のシャツを着て突然、会見場で話し始めた女性は、上小澤静江さんです。

 富士吉田市で生まれ育ち、去年、91歳で富士登山に成功した上小澤さんは、大金を投じる新たな開発には反対だといいます。

上小澤さん
「私は100歳まで登りたい。富士山を愛しています。もう腹が立って、黙っていられないのです。マイカー規制をしたら、CO2の心配もないし、そして登山者も規制しようと。そんな時に、なぜ電車を作るんですか。何千億ですか。大きなお金を使って無駄なことをしてほしくない」 山梨県 長崎幸太郎知事

 富士山のお膝元から吹いてくる鉄道構想への逆風。山梨県の長崎知事は、次のように話します。

長崎知事
「しっかりと関心をお寄せいただき、議論をやっていこうじゃないかという動きにつきましては歓迎いたします。他方で、もちろん賛成される団体もすでにあるわけですから、最適解を導き出していきたいと思う」

(「グッド!モーニング」2024年5月1日放送分より)

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