第二次世界大戦で戦死した画学生の作品を展示する長野県上田市の戦没画学生慰霊美術館「無言館」で4月29日、毎年恒例の「成人式」が開かれた。ゲストに招かれた映画監督の周防正行さん(67)は、全国から応募して参加した18歳から24歳の16人に対し、自身の青年時代を赤裸々に打ち明けながら、心がこもったメッセージを送った。【高橋秀明】
「オペラ歌手になりたい」「小学校の先生になる」「医師として働く」「全国各地をバイクで巡りたい」――。参加者らは、将来の夢を1人ずつ紹介され、周防さんから直接、自筆の手紙を受け取った。
その後の講演で、周防さんは「自分が成人した時は、何をやりたいのか、何ができるのか、どう生きていくのか、何も分からず、不安や焦りやいらだちで、とても不機嫌な青年だった」と語り始めた。40歳になる年に公開された映画「Shall we ダンス?」で日本アカデミー賞を独占するなど映画監督として活躍することになるが、20歳の頃は「教訓めいた話をする大人が大嫌いで、成人式にも出席しなかった」と振り返った。
その上で周防さんは「その時の自分に無言館で展示されている作品を見てほしかった。ここには、あなたたちと同じ年齢だった若者の叫びや祈り、迷いがある。これから生きていく中で何かに迷ったり、絶望した時は無言館を訪れて、今の自分の気持ちを思い出してほしい」と語りかけた。
米カリフォルニア州出身で長野県小谷村で暮らしたこともある名古屋芸術大学3年のカフェルかれんさん(21)=名古屋市=は母親の勧めで参加した。戦没画学生が遺した絵を見学し、「先人たちは、みんなで切磋琢磨(せっさたくま)しながら努力して、それでも戦争で命を落としてしまった。自分も頑張らないとなと思った」と表情を引き締めた。
将来はガラスに繊細な装飾を施す切子作家になる夢がある。カフェルさんは「日本の伝統工芸は継承者が少なくなってきているが、切子には大量生産にはない、人の手で作るものだからこその魅力がある。途絶えさせたくない」と語った。
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