りつこさんが描いた漫画=りつこさん提供
写真一覧

 「自分は一体なんで生きているのだろう」。広島県呉市宮原の漫画家、りつこさん(61)は、20年以上うつ病を患っている。過去には薬を飲んで自殺未遂をしたこともある。今年に入り、同じように苦しむ人を勇気づけようと自身の闘病記やいじめ被害の経験を4コマ漫画として描き始めた。

 りつこさんは東広島市西条出身。幼少期から手塚治虫さんの「ジャングル大帝」や「鉄腕アトム」などの漫画が好きで、まねて絵を描いていた。漫画家になることを夢見ていた。

 大学卒業後は県内に住んでいた4コマ漫画家の目黒やすしさんの漫画塾で、4コマ漫画の描き方などを学んだ。その後描いた作品の応募を始め、新聞や情報誌に地元の話題や日常の様子などをまとめた4コマ漫画が掲載された。

 そんな絶頂期の約20年前にりつこさんの母が甲状腺がんを患った。症状は軽く完治したものの、その後認知症も患い、施設での生活となった。

 「何にもしてあげられなかった」「母親一人助けられないなんて」。長年苦しむ母の姿を見て激しいショックに襲われた。その後りつこさんも体調不良が続き、うつ病と統合失調症と診断された。

 闘病中は苦しい日々だった。過去にはあまりのつらさから、病院で処方されていた睡眠薬や鎮痛剤を60錠ほど一気に飲み込み自殺未遂をしたこともある。その際は、仕事帰りの夫に発見され一命を取り留めた。右腕にはリストカットの後がいくつも残されている。まだ完治していないものの、りつこさんは時間の経過とともに回復していった。

インタビューに答えるりつこさん=広島県呉市宝町で2024年4月16日午前11時28分、井村陸撮影
写真一覧

 10年ほど前に、うつ病の家族を取り上げた闘病記の本を初めて読み、同じように苦しむ人がいるのだと知り勇気づけられた。そして自分も過去の体験を伝えることで、同じように苦しんでいる人を助けることができると考え始めた。自分が一番得意としている漫画で伝えようと決心した。

 りつこさんはうつ病のほか、学生時代上履きを隠されたり、周囲に無視されたりするなどいじめを受けた経験もあり、そうした場面も4コマ漫画として描いていく。

 これまで書きためた漫画は、ウェブで掲載することを検討している。りつこさんは「生きている中で、苦しい思いをしている人はたくさんいる。自分の漫画を読んでもらい、少しでも人助けになりたい」と話した。【井村陸】

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。