食べることに心が悲鳴を上げていませんか――。摂食障害を正しく理解してもらおうと、一般社団法人「愛媛県摂食障害支援機構」(松山市)が、啓発冊子「わたしと食べること」(A5判、44ページ)を作成した。自らも高校時代に発症した鈴木こころ代表(47)は「思春期に心身とも健康でいることはすごく大切。辛ければ声を上げてほしい」と呼びかけている。
摂食障害は、体重増加を極度に恐れて食事を制限する神経性やせ症(拒食症)や、衝動的に大量に食べて排出する神経性過食症(過食症)が代表的な症状の精神疾患。やせ志向などを背景に1980年代から増え始めたとされる。厚生労働省によると、患者数は2021年時点のデータから推定約22万人としているが、実態がつかめていないのが現状という。
鈴木代表は、10代の時に苦しんだ自身の経験から16年に同機構を設立。摂食障害に関する啓発運動で各地の団体などが使っている活動のシンボル「マゼンタ(赤紫)リボン」を考案した。症状などを解説した動画を動画投稿サイトや機構のホームページで公開しているほか、本人や家族が対象のカウンセリングに取り組んでいる。近年は低年齢化し、気付かないまま進行するケースがあることから、冊子を通して啓発することにしたという。
作成したのは計1万8000冊。「太りやすいとされる食べ物を極端に拒絶する」「容姿や体形にこだわる発言をする」といった発症の「シグナル」を例示し、疾患について分かりやすく説明している。相談窓口や支援拠点病院などさまざまな情報を掲載し、ほのぼのとしたイラストも添えて読みやすいように工夫した。
発症率が比較的高いとされる高校生に手に取ってもらおうと、全国の高校や中高一貫校など約5000校を中心に10~11月に郵送で無料配布した。保健室などに置いて生徒らが自由に読めるよう呼びかけている。鈴木代表によると、配布された学校からは「摂食障害で入院する生徒が多いので、教職員で学ぶためにもっと送ってほしい」といった要望があり、増刷したという。
25年2月まで実施している「摂食障害全国一斉啓発キャンペーン」の一環として、今後は計15団体が全国各地で配布する予定。希望者には個別に配布する(数に限りあり、郵送料は別途必要)。問い合わせは同機構(089・909・5830)。【広瀬晃子】
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