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 匿名での出産を望む妊婦が病院の担当者だけに身元を明かして出産する「内密出産」。東京・墨田区の病院が今年度中に「内密出産」と「赤ちゃんポスト」の運用を開始するとして、話題を呼んでいる。

【映像】熊本市にある国内初の赤ちゃんポスト

 望まぬ妊娠をした女性や孤立出産に悩む女性による悲惨な事件などを防ぐため、医療機関としては国内で2例目の運用となる。しかし、SNSでは「東京で無責任に子どもを作る人が増加しない?」「内密出産して預けちゃえって人が増えそう」といった懸念の声あがっている。

 17年前に国内第1号の「赤ちゃんポスト」を開設した熊本市の慈恵病院では、2021年に初めて内密出産を行ったことでも話題になった。当時、現行法の中で「内密出産」が違法の可能性があることが問題視されたが、国は「違法行為にあたらない」と見解を表明。その後2022年9月にガイドラインを公表した。しかし、今でも“子どもの知る権利”や“出産費用”などの課題が残されており、「法整備の必要性」が訴えられている。

 東京でも開始される「内密出産」の受け入れと母親の支援策について、『ABEMA Prime』で議論した。

■利用者増える?東京でスタートすることへの懸念

 元熊本日日新聞記者の森本修代氏は、「出産する女性の支援につながらない」「犯罪に利用される可能性がある」「外国人への対応が困難」「未受診妊婦を増やしかねない」との懸念を示している。

「内密出産を希望する女性は、おそらく虐待やDV、貧困など何らかの問題が背景にあると思う。しかし、匿名だとその人たちの支援に繋がりにくいのではないか、という懸念が1つ。また、東京だと外国人も多く、その方たちに日本国籍を与えるのかといった問題や、“陣痛が始まったら内密出産の病院に行けばいい”と考える未受診妊婦を増やしかねないのではないか」

 “内密出産法”の必要性を訴える国民民主党の伊藤孝恵参議院議員は「東京だけでなく、全国で内密出産ができる機関が増えることを求めていた。歓迎しているし、志を持って始められる方々に期待している」と評価する。

 2023年度の人工妊娠中絶件数は、全国で12万6734件。熊本の2271件に対し、東京は2万5326件と10倍以上の差がある。「『子どもを捨てるのを助長する』という声はすごく多いが、私たちが話す中でも、子どもを産むか産まないかを安易に決めますか?という話だ」としつつ、「これまでの検証部会の資料なども全部読み、その中で子どもの権利に関する専門家の意見もたくさんあるが、女性のありとあらゆる背景を想像する人はいない」と問題点も指摘した。

■預け入れる“母親”をどうサポート

 森本氏が特に訴えるのが、子どもだけでなく母親へのサポートだ。

「私が取材した方は、『なかなか人に言えなかったけど、もっと早く相談すればよかった。相談していいんだということをみんなに言いたい』と言っていた。すべての医療機関に守秘義務があり、ちゃんと秘密は守ってくれるので、“安心して病院にかかっていい”と伝えていく必要がある。ひとつ忘れてはならないのは、男性側の責任。無責任な男性を助けることになってはいけない」

 また、「出産時だけ医療が介入すればいいということではない」とも指摘する。

「妊娠した時から定期的に妊婦健診を受けていただく必要があるし、出産した後も産後うつの危険性はある。医療が関わってきちんとケアをしていく必要があると思う」

 本番組(2022年2月14日放送)に出演した熊本県・慈恵病院理事長兼院長の蓮田健氏は、赤ちゃんポストや内密出産を利用する女性について、「8割から9割に、例えば発達障害、知的障害みたいな背景を持っていたり、被虐待歴、家族との関係、特にお母さんとの関係がうまくいっていない」と述べている。

 森本氏は「妊娠の相談窓口は非常に増え、匿名でいいという行政もある」とした上で、「必要なのは、“この国は安心して子どもを産み育てられるんですよ”“育てられなかったら他の養親に託す方法もあるし、みんな妊娠したことを責めたりせずに祝福するんだよ”というメッセージを出していくことではないか」との見方を示した。

■「ガイドラインで規定しきれないことは法律で解消を」

 伊藤氏は「(2022年に作られた)ガイドラインで規定しきれない部分は、法律を作らないと解消できない。安定的な運用や安心安全の担保を国がするべき」と、法整備の必要性を改めて指摘。具体的な問題には、出自を知る権利や、出産費用などがある。

 「実は今作っている特定生殖補助医療の法律で、出自を知る権利を国が100年間担保する、というものをようやく生むことができそうだ。これは精子・卵子の話だけだが、内密出産や特別養子縁組まで広げられるので、なんとかやっていきたい。制度の安定的運用にはまだまだ課題がある。お金の話や妊婦健診を受けられずに産むことによる医療事故や訴訟、係争。それから実施機関の選定は、拠点を増やしていく上では絶対に決めないとダメ。そして、どこまで母親の権利・プライバシーを守るのか、子どもの権利として福祉の観点で情報を取ってくるのか。(母親のプライバシー権と子どもの知る権利は)相容れないが、結論を出すのは自治体ではなくて国だ。

 母親が情報を知られたくないという点も、まさに今特定生殖補助医療法で詰めている。“あなたはこういう産まれ方をした”“あなたはこういうルーツだ”と知っていないと、自分の情報にアクセスできない。アクセスした時には、どこまで出すか、何歳で出すかを国が担保できているか。ただ、アイデンティティを保つために知りたい情報は子どもによって違うはずで、“全てを知ることが出自を知る権利だ”と決めつけるのは傲慢だと思う。なので、そこも含めて精緻に進めている」と説明した。(『ABEMA Prime』より)

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