先日、修学旅行での「おやつ交換」が禁止されたというXの投稿が話題になった。理由は、小麦や卵、果物などによるアレルギーの危険性を排除するためで、子ども本人が「アレルギーはない」と言っても学校側はおやつ交換NGにしたという。児童から不満の声があがったが、教師からは「責任を取れない」という説明があったそうだ。
【映像】1位は「鶏卵」 アレルギーの原因食品割合(即時型)
X上では「不満を言うのは間違い」「危険性を親も教えるべき」「理解がない日本はアレルギー後進国」など無理解を問題視する声の一方で、「気にしすぎ」「慣れれば大丈夫」との反応も。『ABEMA Prime』では、日本におけるアレルギー当事者の生きづらさと、対処法などについて専門医とともに考えた。
■清潔すぎるとアレルギーには逆効果に?
おかもと小児科・アレルギー科の岡本光宏院長は、今回の「おやつ交換NG」について、「集団生活は安全性が第一。個別の判断を持ち込むと間違いが起こるので、安全を優先させたのは良い対応だと思う」と評価する。「アレルギー症状にはグラデーションがあり、口の中がかゆい程度から、アナフィラキシーショックで重症化する人もいる。軽い・重いで分けると複雑になるため、集団生活ではシンプルな対応のほうがいい」。
岡本氏によると、幼児の食物アレルギーが増加した背景として「不必要な除去が多かったから」だと指摘する。2019年までは「何かあっては困る」と、アレルギーになる前から卵や牛乳を幼児に食べさせないよう、除去していた。しかし「摂取開始時期の遅れが発症リスク」と指摘され、現在は厚生労働省のガイドラインでも「不必要な除去」はしないよう明記され、患者数は頭打ちになっている。
清潔すぎると、アレルギーに関しては逆効果になるとの見方もある。1980年代にイギリスで提唱された“衛生仮説”では、乳幼児期に衛生的な環境で育った子どもは、微生物などにさらされる機会が少ないため、免疫系の発達に影響し、アレルギー疾患を引き起こしやすくなるとされる。
岡本氏は「2017年の“PETITスタディ”では、全員ではないものの、生後6カ月から卵の黄身や卵白を少量ずつ食べていくことで、卵アレルギーを予防できる人が多いとわかった」と紹介し、「そこからは除去するよりも、むしろ早めにいろいろなものを食べたほうがアレルギーは減るのではないか、という方向性に学会や診療は向かっている」と述べた。
■ママ友が原因で娘が救急搬送、進路選びに奔走 当事者の苦労
小学6年生の娘が生まれつき複数の食物アレルギーを抱えている、今村さんに話を聞いた。娘の症状について、「0歳でアトピー性皮膚炎が、外でご飯と味噌汁を食べた時に全身にじんましんが出た。救急外来で採血したところ、卵や小麦、乳、米、大豆などの食物アレルギーがわかった。3歳からは対象が減って、今は生卵と牛乳以外は食べられるようになった」と説明。
周囲の理解を得る難しさもあったという。「幼稚園の時、ママ友に説明したにもかかわらず、私が見ていないところで娘にチーズ入りのおにぎりを食べさせてしまい、アナフィラキシーで救急搬送になった。そこから人と食事するのがすごく怖くなってしまい、引きこもったこともある」「ママ友と集まる時、食事を別にしていても、向こうの子どもはアレルギーが出る食材を触った手や口で遊び始める。私はそれを静かに拭いたりしていたが、喋るよりもそっちが気になりすぎて、集まりが苦痛になった」と明かす。
娘の進路選びにも苦労したそうだ。保育園では入園直前で「うちでは無理」と拒否されたため、家から遠くて月謝も高いが、対応した給食を出してくれる園へ。小学校は「理解がある」と定評の私立校を選ぶも、毎日お弁当を持たせる必要があり、長男とは別メニューで調理した。今村さんは「先生によって理解度が違うので、それぞれの判断で守ってもらえるよう説明するのが難しい」と語る。
コラムニストの小原ブラス氏は、「幼稚園や学校の現場に任せて、理解を高める方法でいいのか。アレルギーが強い子のための施設やクラスを作るところまでやったほうがいいのか…」とコメント。元経産官僚で宇宙関連事業に取り組む武井亜樹氏は、「公立の先生に“ちゃんと気にして”とお願いするのは、給料面を含めてやるべき範囲を超えていると思う。ただ、命に関わることで、失敗すれば責任問題。(求めるなら)お金を払って、質の高いサービスとして行うべきではないか」と投げかけた。
■食物アレルギー防げる?「自己判断は避けて、早いうちに受診を」
食物アレルギーを治す手段はあるのか。岡本氏は「免疫療法があるが、まだ研究段階。患者に卵や牛乳を慣らしていく治療には危険も伴う。治せるメリットと、その過程で事故が起きるデメリットのどちらが高いか判明しておらず、確固たる治療とは言えない」と説明。
ただ、「大人になっても治らなければ専門医へ」では間に合わないこともあるため、なるべく早い段階での受診を勧める。「0歳児は離乳食で卵や牛乳、小麦を食べ始めていくという中で、まずは予防。皮膚と腸管の2点が重要で、スキンケアでの予防と、早い時期からいろいろなものを食べることで関与できるとアドバイスしている。これが10歳になってくると、免疫療法のリスクが上がってしまう。むしろ除去方法や、どういう時にアドレナリン注射を使うか、学校や外食の環境など、安全に生活するための知恵に重点を置いていく」。
具体的に自分が何のアレルギーを持っているか、血液検査で分かるものなのか。岡本氏は「血液検査だけでは食物アレルギーという診断にはならない。やはり診断のゴールドスタンダードは“食物経口負荷試験”だ。これが非常に大事で、なるべく早いうち、できれば2歳になる前に負荷試験が受けられる施設に相談したほうが良い」と述べた。
そうした上で、「自己判断を避けることが大事だ」とも呼びかけた。「“卵を食べて口の周りが赤くなった。だから卵アレルギーだ”などと、自分で決めつけないこと。かかりつけ医に相談して、負荷試験などでアレルギーの有無を調べる。思い込みで完全除去をせずに、『どれくらいまでなら食べられるか』を相談することが大切だ」。(『ABEMA Prime』より)
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