ハンセン病の元患者家族に対する補償を巡り、元患者と事実上の養親子関係にあったのに補償金を不支給とした国の処分は違法だとして、沖縄県内の男性(83)が国に処分の取り消しなどを求めて提訴した。25日に福岡地裁(林史高裁判長)で第1回口頭弁論があり、国側は請求棄却を求めた。
家族補償法は、国の誤った隔離政策で差別に苦しむ元患者の親子や配偶者らに180万円、きょうだいらに130万円を支給すると定める。らい予防法が廃止された1996年3月末までに家族関係にあったことなどが要件で、養子縁組や事実婚も対象となる。
訴状によると、男性は13歳だった1953年ごろ、元患者だった叔父の事実上の養子となった。沖縄には長男らが位牌(いはい)を継承する風習があるが、叔父には子供がおらず、男性が養子となって位牌を継いだという。
男性は叔父がいた国立ハンセン病療養所「沖縄愛楽園」で独身時から面会を重ね、結婚後は妻子も連れて「親子」の交流を深めた。ただ、男性が偏見や差別を受けることを叔父が危惧したため、養子縁組を結んだのは2002年だった。
男性は20年12月に養子として補償金180万円を請求。しかし国は22年3月、「96年3月末までに養子縁組を結んでいない」として不支給処分とした。
男性側は「養子縁組を結ぶ前から互いを養親子と認識し交流していた。事実上の養子は明文規定がないが、事実婚と同様に認めなければ不平等だ」と訴えた。
国側は「(立法過程で事実上の養子を)支給対象とすべきか議論された形跡がないことも考慮すると補償金の支給対象に含まれないとする(立法者の)意思であったと考えるのが合理的。事実上の親子関係が存在したか否かにかかわらず元患者家族に該当しない」として、請求棄却を求めた。
福岡地裁には他にも、別の元患者と養子縁組を結んだ両親の子ら親族6人が家族補償の不支給処分の取り消しを求めた訴訟があり、12月9日に第1回口頭弁論が開かれる。【志村一也】
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