ワインボトルの上部を覆うアルミのふた。キャップシールと呼ばれることが多く、ワインを開けると捨てられてしまうもの。大阪市のアレトコレ ココさん(36)はキャップシールを使った作品を自ら「ワイントップアート」と名付け、「今、ここ(地球)に生きる」をテーマに動物の作品を生み出している。【前本麻有】
友人とワインを飲んでいた時、何気に手にしたキャップシール。硬すぎず、軟らかすぎず「何か作ったら面白そう」と思い立ち、2018年からワイントップアートを作り続けている。
モチーフは愛してやまない動物たち。幼い頃から猫や犬などを飼い、今もアフリカなど国立公園や動物保護区に設置されたライブカメラで配信される、ありのままの野生動物の姿を眺める。「人間ほど笑ったり泣いたりしないのに、動物の表情は可愛く、かっこいい。過酷な自然の中で生き抜く力強さ、命の輝きがある」と魅力を語る。
ワインについては「全然、詳しくない」。キャップシールはレストランなどに頼んでもらう。驚いたのは色の豊富さ。高級感ある金や深みのある赤や青、華やかなピンクなど「色をそのまま生かしたい」と着色は一切しない。眉ばさみで極細に切って羽にしたり、裏面からプツプツと鉄筆で押してザラザラしたイグアナの質感を出したり。粘土細工やネイルアートの道具も駆使して、関節の微妙な角度にもこだわり、躍動感ある構図で表現する。
芸大時代、当初は絵画を描いていた。次第にキャンバスと自身の手を介する「筆の存在が邪魔」と感じ、指や腕で絵の具を塗りたくっているうちに「直接、素材に触れて作れるもの」を求め、彫刻を学んで立体作品を手がけるように。
卒業後は広告業などに就職するも17年、中学時代に語学留学で訪れて興味があったオーストラリアへ。頭部が黄色のキバタン、鮮やかな赤色のヒインコが、日本のハトやスズメのように身近だった。カラフルな日常に刺激を受け、それが帰国後の作品づくりにもつながっている。
作品「ジャワサイ」の一部にはワインキャップの針金も使い、内部が透けて見えるようにした。膨大な数のキャップシールのつなぎ目が見え「この数だけ、ワインを飲んだ人や場所の物語がある」と思いをはせる。また、透けさせることで絶滅危惧となっているジャワサイの現状も表した。
作品の売り上げの一部は世界自然保護基金に寄付をしている。今後は子ども向けのワークショップにも力を入れたい。「幼い頃はみんな、葉っぱを皿にして泥団子をのせたり、空の雲がソフトクリームに見えたり『見立て遊び』をしていたはず。それがいつしか、何かを作るとしたら『材料を買わなきゃ』となってしまう」。「何か発想し、工夫して楽しむことは生きていく上で大事なことなんじゃないかな。想像と創造の面白さを伝えていきたい」とほほ笑んだ。
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12月22日午後2時から大阪市中央区の「小さなお庭と猫の図書館」で制作実演。3月10日から大阪市中央区の「MANIFESTO GALLERY」で個展。作品の貸し出し展示も受け付けている。問い合わせはホームページ(https://www.aretokore-coko.com)から。
アレトコレ ココさん
1988年大阪府生まれ、京都市立芸術大学彫刻専攻卒業。2017年にオーストラリアでの滞在を経て、18年から自ら考案した「ワイントップアート」を制作。
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