日本有数の温泉地、熱海市。今、この町の市長選をめぐり、ある波紋が広がっている。それが、中国人の出馬表明だ。
【映像】熱海市長選に出馬表明した中国人の徐浩予氏(31)
注目されたのは2026年の熱海市長選に立候補を表明した、31歳・中国出身の徐浩予氏。中国生まれの徐氏が来日したのは2015年。去年10月に熱海市内で中国物産のお店を開業し、生活している。そんな彼が立候補を考えるきっかけとなったのは、2021年、熱海市を襲った土石流災害だった。当時、徐氏も被災者の一人として苦しむ中、市長の対応に不満を感じ、政治を変えたいとの思いを抱いたという。
ただ、市長選出馬には「熱海が乗っ取られちゃわないかな…」「絶対だめ!まず出馬なんてできるの?」などと厳しい声が上がっている。そもそも出馬は可能なのか、『ABEMA Prime』では、徐氏と共に、外国人の参政権を考えた。
■熱海市長選に出馬表明した徐浩予さん
徐氏は、2021年に熱海市でおきた土石流災害で被災した。「家を購入した1週間後の出来事だった。住民票を熱海に移していなかったため、市役所では『東京に戻ってくれ、熱海市は何もできない』と言われて、日本や熱海の行政はおかしいと思った」と振り返る。
行政で対応してもらえなかった徐氏は、「1カ月の自己避難の生活があった。その後日本のテレビが私のことを取材して、静岡県のある県民の方が、私の情報を日本共産党の国会議員に教えた。その後、議員や熱海市の前の市議などが熱海市役所や内閣府被災所に連絡して、やっと避難所に入ることができた。被災してから1カ月半後に初めて被災証明書が届いた」。
そもそも、日本に来たきっかけは、「日本人の礼儀や日本の文化が勉強したかった」といい、熱海に来たのは「『伊豆の踊り子』の小説が好きで、小学生の頃に読み、映画も何十回も見た」からだと語った。
徐氏は市長になったら「熱海の経済復興」「高齢者の医療費無償化」「教育費(大学まで)無償化」を実現したいという。「熱海市の店舗は午後3時ぐらいにほとんど閉まる。観光客が花火大会や温泉、海に来ても、熱海の深いところは全然見えない。特に3万5000万人の中、半数以上は高齢者だ。みんな老後の問題、高齢者になったら医療費が高い。住民の不安が大きい」と述べた。
■「帰化の時点で確認をするのが、今やるべきこと」
日本の被選挙権(立候補)の要件は、まず日本国民であること。衆院議員・市区町村長は満25歳以上、参院議員・知事は満30歳以上、都道府県・市区町村議会議員は満25歳以上で、3カ月以上その地域に住所あり、などの条件がある。また、帰化の条件には住所条件、能力条件、素行条件、生計条件、重国籍防止条件、憲法遵守条件があり、申請手続きには約1年半かかる。徐氏は現在、日本への帰化を申請しており、申請が通れば市長選への出馬は国民の権利として当然認められる。
一方で、帰化せず在留している“外国人”の場合は、公職選挙法により投票権・立候補権共に認められていない。外国人参政権の導入を支持する、名城大学教授の近藤敦氏は「年々日本に住む外国人が増え、課税義務は同等なので、地方での立候補権は認められるべき」「諸外国では二重国籍・地方投票権・立候補を認めるのが主流になりつつある」との考えだ。
これに対して、環境副大臣・元デジタル副大臣、衆議院議員の小林史明氏は「中国、北朝鮮、ロシアと野心的な国に囲まれている日本は、安全保障上ものすごくセンシティブな状況に置かれていることを前提に議論しなくてはいけない」といい、「今も外国人参政権を認めていないのは、憲法の中で整理があって、それに準拠してやっている。帰化の時点でちゃんと確認をしていくのが、今やるべき本来の姿だと思う」と指摘。
徐氏が、帰化する決断をしたのは、「この3年間、市民の苦しさなどを見たら、若者として何かをやりたい気持ちになる。国籍帰化は、人生の重要な点だ。前は外国人だが、日本に帰化したら、法律上では日本人と同じ。例えば行政法などの法律が厳しくなったら、人材を失ったり、国や市が不利になる可能性もある」と説明した。
また、批判の声に対しては「純粋に熱海への愛で立候補」「乗っ取るなんてことはあり得ない。中国人を大量に呼ぶこともしない」「元中国人の自分が日本にとって良い事をすれば外国人への差別・偏見を減らせる」との思いを持っている。
小林氏は「(日本には)外国人の方々も住んでいて、その人たちが感じた課題をどうやって行政に反映するのか。その仕組みがないから、徐さんは自ら選挙に出たいと思ったわけだ。そこを考える必要がある。今、市町村任せにしているものをせめて県がやる、国が集約してコールセンターを作るとか、本来はそういう整備をやる必要がある」との見方を示す。
さらに、「結局、外国人が日本文化になじめるかは、地域の治安や快適さに直撃している。なので、外国人が本当は何に困っていて、何が分かれば日本の文化に馴染めて生活が十分にできるのかは直接地域に関わってる。人口が減るから、どうせ外国人を入れる、外国人を入れたら、意見を聞かなきゃいけない。そういう安易な考えで日本は過去に、安いから海外に工場を作ろう、そこに労働力を任せよう、日本の投資のお金も仕事も海外に消えて行って、成長が失われた。今、それを見直して、お金は高いかもしれないが、安全保障上信用できる国、日本国内で物を作ろうと言って、経済安全保障という考え方に変えてきた。だから、一見合理性がありそうだけど、ちゃんと考えないといけない論点をなあなあにしちゃいけない」とした。
(『ABEMA Prime』より)
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