子育て時代に親子で遊んだ思い出のプールの老朽化を目の当たりにした会社経営者が、愛知県尾張旭市に市民プールのリニューアル工事を寄付する。改修費は5億~6億円と見込まれるが、市の負担ゼロでピカピカに生まれ変わることになった。「大きな設備が壊れたら終わりだろう」と閉鎖を覚悟していた柴田浩市長は、思いがけないプレゼントを喜んでいる。
現在の市民プールは50メートル、25メートル、幼児用の三つの屋外プールがあり、利用料金は大人310円、子ども100円と格安。オープンは毎年7、8月の2カ月間だけだが、市内外から年間約2万人が訪れる。だが開設から46年が経過しており、プールの底はブカブカ、プールサイドはひび割れて雑草が生えるなど、誰もがひと目で激しい老朽化に気付く状態だ。
リニューアルを申し出たのは「市にゆかりのある50代の会社経営者」。プールの前を通りかかった時、設備がボロボロでも元気に遊ぶ子どもたちの姿を見かけ、子どもを連れてきた時代の思い出がよみがえったという。そこで今年4月、「きれいなプールで楽しく、安全に遊んでほしい」と市にリニューアルを申し出た。
設計や工事にかかる全費用を会社経営者が負担し、経営者の知り合いの業者が施工する。市は「日よけがほしい」など市民の要望を伝えるなど、両者が協議しながらリニューアルを進める。会社経営者側からは、幼児プールに滑り台や噴水、滑り台などを新たに設置するなどの案が示されているという。2025年の営業は休止し、26年に再オープンする予定だ。
民間の屋内プールが増える一方で、大きな維持費や改修費が必要な公営プールは全国的に次々と閉鎖されている。柴田市長は「市の財政力ではリニューアルするお金は出てこない。大きな設備が壊れたら終わりだろうと思っていた。民間の方の発想で、かなり楽しいプールになりそうだ」と期待している。【荒川基従】
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