石川県中能登町に工場を持つ繊維製造会社「藤井」(奈良県橿原市)が高吸収タオル「能登再晴(のとふたたびはれ)」の試行販売を応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」で始めた。能登は合成繊維の世界有数の産地。OEM(相手先ブランドによる受託生産)でなく、能登独自ブランドでヒット商品を生み出し、地震と豪雨の二重被災に苦しむ人々の誇りを取り戻す狙いだ。
1921年創業の藤井は65年、能登半島中部の中能登町に「能登工場」を開設。合繊と綿を組み合わせたパイルニット生地を主体に、寝具関連製品のOEM生産を能登で手掛けている。
元日の能登半島地震では敷地がひび割れ、機械が倒れるなどしたが、1月中旬に操業を再開できた。しかし、帝国データバンク金沢支店などによると、創業1919年の繊維メーカー「シュクタニ」が3月に経営破綻したほか、零細業者数社が被害を機に廃業するなど中能登町内の繊維業者への影響は深刻だという。
再開した藤井の能登工場でも機械のトラブルが増えるなど被災の影響は続いている。この状況から社長の藤井幹晴(みきはる)さん(66)は「純粋で粘り強い能登人のものづくりの素晴らしさを新製品で伝え、能登を元気づけたい」と他社ブランドに頼らない“脱OEM”を計画した。新ブランド名・能登再晴には復興の願いを込めており、商標出願中だ。
綿とポリエステル、ポリウレタンを配合したフェースタオルで34×80センチ。ピンク、グレーなど4色展開。能登の合繊糸作り技術に加え、藤井独自の編み立て技術を使った高吸水性と伸縮性が特徴。一般のタオルの2、3倍の吸水性能を持ち、フェースタオルなのにバスタオル代わりに使える商品になっている。
Makuakeは、ものづくりを応援する購入型クラウドファンディングサービス。15日に発売した「能登再晴」(https://www.makuake.com/project/fujii/)は目標額30万円をわずか2日間で達成するなど好調だ。価格は2枚セット3002円などで、売上金の一部を災害義援金として中能登町に寄付する。Makuakeで2025年1月30日まで販売を続けた後に一般販売に切り替える予定で、商品として定着するかは今後約2カ月間の販売動向が鍵を握る。
能登工場長の谷栄作さん(67)は「能登は地震に加え、豪雨にも見舞われ、厳しい状況が続いている。『能登再晴』を通じ、災害を乗り越えて頑張っている姿を全国に伝えたい」と話している。問い合わせは藤井(0744・22・3381)へ。【皆木成実】
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