日本を代表する近代建築家の吉村順三が設計し、1954年に建てられた三里塚教会=成田市で2024年11月1日午後1時7分、小林多美子撮影

 日本を代表する近代建築家、吉村順三(1908~97年)が設計した千葉県成田市三里塚の「三里塚教会」で23日、教会の歴史についての講演会とキャンドルナイトが開催される。同教会は吉村の設計による唯一の教会建築で、イベントを企画する千葉大学の頴原(えばら)澄子准教授は「貴重な建物であることを多くの人に知ってほしい」と話している。

 同教会は1954年に建てられた。クリスチャンで、その後に成田空港建設の反対派組織「三里塚・芝山連合空港反対同盟」委員長に就任する戸村一作さん(故人)の自宅敷地の一角が提供された。

 吉村は奈良国立博物館(奈良市)や米ニューヨークの「ロックフェラー邸」などを手がけたことで知られる。吉村が師事したチェコ出身のアントニン・レーモンドは、伝統的な日本の木造建築に西洋の技術(トラス構造)も取り入れた、いわゆる「木造モダニズム」の第一人者で、同教会はその系譜にあるという。

 頴原准教授によると、吉村が同教会を設計した経緯は不明という。以前は同教会と吉村との関係はあまり知られていなかったが、2014年に同教会の展覧会が東京都内で開催されるなど、建築の研究者らの注目を集めている。22年から頴原准教授の研究室が今後の活用などを模索するため、調査を行っている。

 教会は一部2階建てで吹き抜けの構造となっており、延べ床面積は82平方メートル。屋根の上に鐘楼と十字架がある。室内の十字架は交差する梁(はり)と柱で表現されている。自然光や風を取り入れる設計となっており、頴原准教授は「戦後間もない物資の乏しい時代に、豊かな空間を提供しようと工夫したのではないか」と話す。

 イベントは午後2~4時、神奈川大学建築学部の松隈洋教授らによる講演がある。同4時からキャンドルカバーを手作りするワークショップがあり、同5時から教会前庭でLEDライトのキャンドルが点灯される。

 頴原准教授は「教会の存在を多くの人に知ってもらいたい。吉村がなぜ設計をしたのか、この先、解明していければ」と話している。

 参加無料。講演会とワークショップは要予約。問い合わせは同研究室のメール(sanriduka.event@gmail.com)。【小林多美子】

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