福島県二本松市出身の歴史学者、朝河貫一(1873~1948年)の名前が付いた小惑星が誕生した。正式名称は「29159Asakawa」。2025年は朝河が開戦回避に向けて行動した太平洋戦争の終戦80年に当たり、命名に奔走した有志は「空を見上げて博士の思いを考えてほしい」と訴えている。
「光満ちわがたまつゐに融(と)くる時、われも世を照らす星とならむか(自分がなくなれば、世界を照らす星となるのだ)」
これは朝河が晩年に残した長歌の一節だ。
旧二本松藩士の息子として生まれた朝河は、渡米後の1909年にアジアへの侵略政策を強める祖国を戒めた著書「日本の禍機」を出版。日米の緊張が高まる41年には、開戦回避に向けて昭和天皇宛ての「米国大統領親書」草案を書いた。
小惑星への命名は、朝河貫一博士顕彰協会会長の甚野(じんの)尚志(たかし)・早稲田大教授やNPO法人「地域のみんなのチカラ」、元県議の甚野源次郎さんが「歌にあるように博士が星になったのであれば、星に朝河の名を命名しよう」と発案した。
その後、田村市星の村天文台の大野裕明・名誉台長を通じてアマチュア天文家の渡辺和郎さん、藤井哲也さんが発見した小惑星への命名を国際天文学連合に申請した。10月14日に正式認定された。
小惑星「Asakawa」は直径約5・5キロ、3・7年かけて太陽の周りを1周する。
15日に福島市の県庁で内堀雅雄知事に命名を報告した甚野教授は「朝河博士の精神を継承していかなければいけない。どうか空を見上げてほしい」と話した。【岩間理紀】
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