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 40代や50代に差し掛かると、急に出始める四十肩や五十肩。しかし実は老化とは関係なく、その原因はいまだわかっていないという。そんな「肩」にまつわる謎を調査した。

【映像】ペリッ!関節包を破る衝撃音(施術の様子)

 専門医が書いた本がヒットし、著名人も妻夫木聡(43)や、「かまいたち」山内健司(43)、いとうあさこ(54)らが肩の痛みを訴えた。

 「20代で発症することなんてあるの?」と驚くのは、土屋太鳳の弟で、声優の土屋神葉(しんば・28)だ。「お風呂に入っているときに背中を洗いたいが、右肩は止まっていけない。ひどい筋肉痛をさらにひどくした感じ。関節の痛みか、筋肉なのかわからない」と症状を明かす。

 こうした状況の時、体はどのようなことが起きているのか。肩関節の専門家である、大阪大学大学院工学研究科・招へい教授の菅本一臣医師は「老化とは関係ない」と語る。「現代医学でもなぜ五十肩が起こるかは全くの謎。それがわかればノーベル賞級の発見だ」と語る。

 菅本氏によると、五十肩の正式名称は「肩関節周囲炎」。別名「凍結肩」とも言い、痛みなどにより肩が上がらなくなる病の総称だ。肩の痛みには他にも、筋肉が切れる「腱板断裂」や、筋肉が石灰化する「石灰性腱炎」、リウマチなどがあるが、中高年の症例の約60%を凍結肩が占める。

 「初めの1〜2カ月は強烈な痛みで、仕事できない。つらすぎて夜も眠れない。3カ月目くらいからカチカチになる」という凍結肩には、炎症期、拘縮期、回復期と大きく3つのステージがあり、平均で8カ月〜1年ほど経過すれば、痛みの多くは軽減するそうだ。

 人間の肩は上腕骨と肩甲骨、鎖骨で構成されているが、その間に「関節包」というコラーゲンでできたゼリー状の袋が付いていて、これが伸び縮みすることで、肩の骨をスムーズに動かすのに一役買っている。

 しかし、この関節包が、何らかの原因で急激に固まり、動きが鈍るのが凍結肩だ。「痛みを感じる神経が、関節包にいっぱい入っているとわかっているが、関節包がなぜ炎症を起こしカチカチになるかがわかっていない。他の関節は一切起こらず、肩だけで起こる」(菅本氏)

 「肩こり」は筋肉の使いすぎによる疲労で、凍結肩は関節包の拘縮による痛みだ。「加齢・老化が関係あると思う人も多いが、20代、30代でも割合は少ないがいる」と菅本氏は言うが、半年前に突然医師から五十肩を宣告された土屋もその1人だ。「アクションのステージで、重い棒を振り回して、ピークが来たのだろう。そこからずっと痛い」(土屋神葉)。

 一方で、痛みに耐えられない人の処置として、最近「サイレントマニュピレーション」が注目されている。肩に局所麻酔を打ち、失神するほど動かない肩を、医師の手で強引に動かす。硬くなった関節包を破り、新しい関節包の再生を促すことで、肩の動きを元に戻すのが狙いだ。

 この治療を行う、AR-Ex(アレックス)尾山台整形外科(東京・世田谷区)の平田正純医師は「進行してしまうと、なかなか打つ手はない。関節包にいったん破れを作る。関節包は傷が入っても、ちゃんと再生する」と語る。脱臼や骨折、出血、神経まひなどのリスクも、ごくまれにあるが、処置後に毎日リハビリとストレッチを行うと、平均2〜3カ月で元の可動域に戻るという。

 重度の五十肩に悩む、元「週刊SPA!」副編集長の田辺健二氏(48)が、実際に施術を受けた。「バットで殴られたぐらいの痛み。半年くらいずっと痛い。コンビニで冷蔵庫を引っ張った瞬間、その場でうずくまる。家のカギを回しただけでも来た」と症状を嘆く。

 田辺氏を診た平田氏は「田辺氏は関節の袋が非常に小さくなっている。関節の中には、敏感な神経のセンサーが張り巡らされていて、刺激を受けて痛みとして感じる。関節のスムーズな動きは全く確認できず、末期に近い」と診断する。

 施術ではまず、患部に近い左肩の神経に、局所麻酔を注射する。15分ほどたち、完全に感覚がなくなると、医師の手で肩を動かす。関節包が破れるような音もする。麻酔で痛みは感じないが、田辺氏は「あー痛い」と声を漏らし、平田氏は「脳みそがバグる人がいる」と返す。

 術後に「複雑骨折したみたいな感じ」だと語った田辺氏は、それから3カ月のリハビリ生活に入った。2日に一度は病院に通い、自宅でも毎日ストレッチを続けた。その成果で、上まで上げられるようになったが、「横はリハビリ中だ」という。

 サイレントマニュピレーションは、とくに拘縮期に効果があると、平田氏は説明する。「炎症期は、薬や注射で痛みを和らげて、早く通り越すのが肝要だ」。五十肩は放置すると、「使わないので筋肉が退化する」と警鐘をならす。

 原因不明なため、確実な予防策はないとしつつ、「現代人はスマホの使用や、作業姿勢に注意すべき。肩甲骨を正しく使えていない。正しい姿勢を守って、肩周りを動かすことが大事だ」と呼びかけた。

(『ABEMA的ニュースショー』より)

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